笑いの現場
タイトルは、ラサール石井執筆の書籍です。最近発刊されたもの。
本人曰く「笑いに関して理屈を言わせれば、日本有数」。そんなラサール石井が、「自らが笑いに関わってきた歴史」「笑いの歴史」「芸人の歴史」について語っている。
なかなか興味深く読めました。
■面白かったこと
・現在までのお笑いの流れ
漫才ブーム、コント55号、ドリフ、ひょうきん族、といったあたりまで。その前後も触れられているけど、ラサール石井が渦中にいた時期の話として、漫才ブームからひょうきん族あたりまでの件は、特に面白かった。
特に、テレビ番組の作られ方の考察(というか、実際の舞台裏を知った上でなのかもしれないが)が秀逸。ひょうきん族や電波少年など、いくつかの影響力のある番組が生み出した手法が、いかに他の番組に影響を与え、浸透していったかという流れが説明されている。わかっているつもりではいたけど、やはり現場を知り尽くしている人が語る内容を聞くと、新たな理解につながるものが多々ある。
・M1の感想
審査員の当事者なのだけど、その割には胸のうちを明かしていた内容となっていると思う。さすがに開けっぴろげな物言いはしていないけれども、本人が審査したときのコダワリにあたる部分は、自分の意見の説明・他の審査員の意見への感想など、踏み入った内容も含まれていた。
個人的には、自分が思っていた感覚と似通った感想だと感じた。これも、面白かった要因のひとつだと思う。
・芸人列伝
ビートたけし、明石家さんま、志村けん、とんねるず、ダウンタウン。この面子に対して、ラサール石井の切り口で批評(基本的に賞賛している)している。彼らの何がどうすごいのか、ということを。
たけしとさんまに関しては、つきあいが深いこともあって、かなり切り込んだ内容だと思った。一般視聴者としてみている限りでは、なかなか浮かんでこない部分を魅せてくれるような内容になっている。
一方で、とんねるずやダウンタウンへの批評については、評論家的な視点という印象が残った。たけしやさんまに対するような、舞台裏の人間観に迫るような記述がなかったから。どちらに対しても、それなりに親交があると思うので、ちょっと惜しかった。
読んでいる途中から「この人、こんなにお笑いを論じるのが好きだったのか」という感想がちらつきはじめた。M1で審査員をしているときは、それなりに言うことは言うのだけど、もうちょっとコンパクトなコメントをすることが多かったから(春風亭小朝の方が、よっぽどうるさい印象がある)。それに、他の番組では、そういう内容を話す姿も見かけないし。
でも、この本では、「お笑いを論じる」姿勢が前面に押し出されてきている。なので、ちょっと「うざさ」もなくはない。それくらい、熱く書いている。
熱すぎて、構成が乱れている(ちょいちょい話がそれている)と感じるくらい。
とはいえ、それだけ熱がこもっているし、漫才ブームからのお笑いの歴史を振り返るのには、なかなか良い一冊になると思います。
まあ、振り返りたい人がいるのかわからないですけど・・・(^_^;
この書籍、お笑いに疎い人(特に、芸人やテレビ番組を知らない方)にとっては、読むのは辛いかもしれない。有名なものばかりなので比較的わかりやすいものの、知らない芸人・番組の話が続いてわけがわからなくなるかもしれません。
でも、意外と、この本を読んで興味が強まる人もいそうな気もする。
ということで、機会があれば一読を(^_^