佐藤康光

佐藤康光さん、ご存知でしょうか?
将棋で2冠を所持されている方です。羽生善治と同世代。
ずいぶん前に「情熱大陸」に出演していて、録画したままになっていたのを、最近ようやく見た。


棋士の姿とプライベートとのギャップ
僕自身は将棋ができない人なのだけど、漫画「月下の棋士」で佐伯のモデルとなったということがすごく印象深く記憶に残っている。でも、素顔はとても普通な人だった。
VTRに映されるプライベートの姿は、ものすごく温厚で柔和な人柄が伝わってくるもの。奥さんから朝食を渡されたときに「あっ、はい、いただきます」と恐縮そうに話していたり。人に頼まれたら嫌といえないとか。趣味はバイオリンだとか。
しかも、本人曰く「社会に適応できてないタイプの人間だと思うので」というくらい(^_^



■好きであり続ける
将棋の面白さについて「考え続けられる喜び」と語っていた。なんちゅう思い言葉だ。でも、ものすごくさらっといっていた。きっと、本当に、それが楽しさなんだろう、と感じるくらい。
実際の行動からも、将棋に対する姿勢が伝わってくる。部屋にある書籍も将棋ばかり。毎朝、新聞から将棋の対局記事を切り抜いている姿だったり。

あと、もうひとつ大事だったのが奥さんの協力。食事も頭に良い影響に気を使っている。また、身支度の準備をするときに、できるだけそっと動く、将棋以外のことに神経を使わせないためらしい。これも、奥さんが理解できる人であったと同時に、理解させられるほどの「好きさ加減」があるからなんじゃないかと思う。


■自分のスタイルにこだわる
しかし、将棋になると、ちがう。ちょっと異端のタイプらしい。定石・常識から外れた手を試みるタイプだそうだ。インタビュー中の言葉からも、その一端を感じた。
「安全に指すっていう能力があんまり長けてない」
「妥協したくないと言うところは妥協したくない」
「突っ張れるところは突っ張りたい」

試みた結果はうまくいかないこともあるから、関係者やマスコミから酷評を受けることもある。映像でも、そんな感じのシーンが流れていた。負けることで得られないもの・失うものがすごく大きな戦いとなる一局もあるのもわかった上で、それでも挑むことを続けるたいと考えているのだと思う。



■捨てる
将棋に対してこれだけ集中している一方で、その他のことについては「本当に?」と思ってしまうような場面もでてくる。

 ・ニンテンドーDSで脳内年齢のテストが41歳。
 ・最近奥さんから買ってもらったものは?」ときかれて、慌てながら一生懸命思い出していた様子が映されていたり。挙句の果てに、まちがっていた。
 ・対局中、何度も立ち上がり、部屋を出てトイレに向かうシーン。毎回男女を間違えていた。

この様子を見ていて、自転車のプロプレイヤーの話を思い出した。ツールドフランスに出場するくらいの選手、連日数百キロを平均40kmくらいのスピードで走り続けらるアスリート。でも、彼らは、歩くと500mくらいで疲れてしまうらしい。
自転車で使う筋肉を鍛える反面、それ以外の筋肉はそぎ落とすかららしい。



自分が目指すものを定め、必要となるものを見極め、磨き上げ、不要なものを捨て去る。これをどこまで徹底的にやれるか、というのが「才能」と呼ぶものの要素の一部だと思う。だからこそ、
「自分の限界っていうのが、明らかに先のところにあるのがわかる。そこにまだ到達していない」
「この程度でいいかなという思想は持ちたくない」
といった言葉がでてくるのだろう、と思った。


人生を生きていくうえで、意外とやっかいなのが、最初の「目指すものを定める」というところだと思う。気がついたらそれに向かってというタイプが、天才なんじゃないだろうか。そうでない人にとって、それに出会うこと・見つけ出すことはけっこう難儀なもの。僕自身、そういうタイプだ。
でも、最近、だんだんとつかめてきたというか、近づいてきたような感覚もある。これからも、一歩ずつ前に進んでいこう(^_^