M1グランプリ 2010

とうとう10年目の大会。しかも、今回がラスト。
どんな対決が繰り広げられるのか。面子から決戦の様子が想像しきれないところもあり、期待を超えた戦いになることを期待しつつ、鑑賞。


■決勝1回戦

(1)カナリア 85(592)
面白かった。でも、1組目でやるのにも、ちょっと向いてない。特に入り。あと、4分のネタにするのはもったいない感じのネタ。長いほど笑える。

(2)ジャルジャル 82(606)
相変わらずの変化球。なんとなくバクマンを思い出した。

(3)スリムクラブ  93(644)
面白い。スリムクラブワールド。このネタも4分でやるのはもったいない。惜しい。
芝居上手いな、この二人。

(4)銀シャリ 88(627)
うまい。うまいんだけど、勢いがちょっと。前に観たときのネタとくらべると弱い感じがする。

(5)ナイツ 87(626)
後半の上がり方はよかった。これも長い時間かけたほうが面白い感じがする。

(6)笑い飯  86(668)
昨年とかぶるのと、ネタ連発させ過ぎな感じ。笑い飯本来のペースとはずれてそうな印象。
この点数のために審査員変えたのか?

(7)ハライチ 84(620)
面白いところもあるのだけれど、昨年とかぶっていて勢いの印象が2割減。2年連続で出場するってのは、難しいんだな。

(8)ピース 81(629)
やっぱり漫才よりもコントの方がいい。このテンポとリズムは、4分の漫才勝負では活かしにくい。

(9)パンクブーブー 96(668)
おもろい!!!!!
パンクブーブーらしさが満載。僕が数年前にパンクブーブーに可能性を感じたときと同じような勢いが見れた。



事前に想像していたよりも面白いネタが多かった。そういう意味では満足。
でも、点数の偏りはいけてない。少なくとも、よしもとが売り出したいコンビに点数入れすぎ。正直、これで興ざめした部分はある。この数年ずっと感じていたことが、いちばんあからさまにでた年のような気がする。



■決勝

(1)スリムクラブ
このテンポに芝居、そして沖縄なまりが効いてる。
ネタは打ち手の少なさ(用意することが難しい、とか)で今のM1の流れに対抗するためのやり方。これにたどりついたのががいちばんすごい。

(2)笑い飯
昔に比べるとすごいつかみがうまくなっているのは成果。
今回のネタは、規格内だった。チンポジの方が笑い飯らしくていい。1本目と類似性のあるネタよりも、場をぶちこわすような爆発が欲しかった。そして、そこに優勝を与える審査員であってほしかった。

(3)パンクブーブー
短い。もったいない。1本目の延長にとどまっているところで、しかもこれから盛り上がっていくんじゃないというノリが観客側からも見えてきたところで終わった。
あれ、あと1分続けてたら爆笑までもっていけたんじゃないだろうか。惜しい。



ということで。今回の優勝は、スリムクラブと予想。新しいスタイルで勝負して、しっかりと結果を残す。爆笑をとった。それは、やはり、きちんと評価されるべき。漫才といっていいかという部分については、これは漫才としていいと思う。面白かったし、あの二人のキャラクターと素質と力量がすべてあいまってできた作品。傍流かもしれないけれど、漫才だと思う。



で。結果は。

笑い飯が優勝。

おめでとう。M1の象徴が有終の美を飾りました。



■まとめ

今回で最後というのは、いい判断だと思う。M1のための漫才が主流となってきていて、漫才を追求するという本来の姿勢がぶれていったというのがここ5年くらいの流れ。それが、結果として技術の向上につながったのは事実。
一方で、そうした路線に過剰投入しすぎて、飽和してしまった感が現れた。それがNONSTYLEでピークを迎えた。そこに対抗する動きとして、新しいスタイルを生み出して挑んでくるコンビも増えた。それは、まさに発展のサイクルとなるもの。M1の価値の大きなところだったと思う。そして、その原動力となったものの最大の功績者は、笑い飯。これは間違いない。


そんな彼らが、最後の舞台で優勝を遂げた。これは、こころから称賛を贈りたい。なんだかんだといわれながらも、足かけ9年間を決勝でプレッシャーを浴び続けながらも戦い抜いたのは、本当にすごい根性のいることで、生半可な気持ちでは堪えられない。もちろん、腕も必要。そうした期間を過ごしてきたからこそ、この優勝を受け取る資格を十分に備えている。

ただ。僕としては、やっぱり、最高の感動というわけにはいかなかった。それは。



笑い飯による「笑い飯らしさ満載のネタ」ではなかったと思ったから。



笑い飯のスタイルであったとは思う。でも、僕が思う笑い飯らしいものではなかった。彼らは、もっと規格外だった。亜流だった。アウトローだった。「うまい」といわれることなんかよりも、もっともっと原始的な欲求の思うままに表現して笑いの渦を生みだす。そういう存在だった。2003年の決勝で見せた漫才は、まさにそれだった。昨年の「鳥人」はそれに近い状態に戻ったかに思えた。でも、戻るよりも、今の流れで、今の審査において勝つ、ということに重きをおいた。

だからこそ得られた優勝という成果。でも、一ファンとしては、やはり少し物足りない。そんな消化不足感も残った。



と、いろいろ書いたけれども、やはりこのイベントは素晴らしい意義があったと思う。笑いのステータスを押し上げたし、一般社会における位置づけの改善にも成功した。

なにより、その年の笑いの締めくくりができる、心から楽しみに過ごせるイベントだった。この日ばかりは、予定をできるだけ入れず、夕食を早めに済ませ、何よりも真剣に番組に集中する。この充実した時間は、何事にも代えがたい貴重な機会だった。


M1が無くなったことが、来年からのお笑い界にどういう影響を与えるのか。けっこう気になるところではある。大きな目標が消えたとき、体勢が大きく崩れたりする。でも、ただ崩れるだけというよりは、そうした節目にこそ新しい才能が芽吹く機会になることもある。M1では出会うことができなかったであろう新たな笑いに、これからもたくさん出会えることを期待して、今年のエントリの締めくくります。