中田英寿×本田圭佑

録画しておいたのを、いまさっき観た。すごい面白かった。2006年に中田が単独でインタビューに答えていたときもよかったけれど、それとはまた違う深さがあった。


対談を見ていて思った。中田と本田の違いについて。
当人同士は「似ている」という意見で一致していた。僕がはたから観ていて感じたのは、「似ている上で異なるところ」だった。それは、それぞれの個性を成り立たせている要素。



中田はintelligence。本田はspirit。



同じような年代で海外に渡り、同じように苦しい経験を味わった。いずれも同じような結論にたどりつき、同じように実践で積み重ねて結果を残していった。ただ、中田は「どうすれば自分のプレーができるのか」を論理的に考え、導き、行動につなげた。本田は戸惑いと苦しみと怒りをきっかけに、自らのプレースタイルを変えるという「決意」「覚悟」を固めることからスタートした。


対談の様子を観ていても、中田は常に「考えている」ことがわかる思慮深さの感じられるように話す。話し始めると、じっと相手に視線を向けつづけ、言いたいことが伝わるように選んだ言葉を口にする。相手ありきのコミュニケーション。


一方、本田の場合は「思いのたけ」をぶちまける。中田という先輩を相手にしている分、言葉づかいに気を使っている様子はうかがえた。それでも、常に「自分が思ったこと」を発したい。そういう欲求の強さがビシビシと伝わってきた。話しているときも、相手をみる時間は短く、常に視線がきょろきょろと動く。おそらく、自分の頭の中に描いているイメージをかなり具体的に追いかけているのだと思う。それくらい自分に集中する。



書いていて思い出した。雑誌の記事で「本田はいいやつ。中田のような毒が無い」という言葉があった。今回の対談を聞いていて、僕も同じように感じた。

本田はビッグマウスだから反感を買いやすい上に、コミュニケーション(特に「大人」な応対が求められる場での)が少し苦手なだけで、根のいい素直な人間だと思った。

中田は、どこまでが「素」なのか読みとれない、読み切れない。どこかしら「何か隠し玉をもって、相手に合わせて話しているのでは…?」と勘繰らせるような気配がある。それは(言葉はよくないが)「狡猾さ」がある。そしてそれは、中田が世の中を強く生き抜いてきた要因でもあると思う。



中田と本田との違いは、海外での成功の仕方にも差となって現れると思う。ただ、僕がいちばん期待しているのは、日本代表での「違い」だ。おそらく、本田の方が導いていくことができるんじゃないかと思った。いい方は悪いが「サッカーバカ」というか「サッカーアホ」な本田には、フォロワーがでてきやすい気がしたのだ。「こいつ、俺が手伝ってやらないとダメだな(笑)」と思わせる「隙」がある。本田がもうちょっと余裕をもてるようになって、「隙」を増やせるようになったら、かなりすごいプレイヤーにいたるんじゃないだろうか。




それにしても、中田のまとっている雰囲気の大人さ加減に驚かされる。4年前と比べると別人と思えるくらい雰囲気をもっている。ちょっとした好々爺みたいな感じ。中田から意図を込めた質問に対し、本田はずいぶんとそれた回答を返してくることが多かった。にもかかわらず、中田は柔らかな表情で、かつ真摯に本田の話を聞いた。話をさえぎったり、自分が本来きこうとしていたことに方向転換させるようなこともなく、本田の言わんとすることを最大限尊重するように。


いまさらながらにあらためて凄い人物だなぁと感心した。何よりも、観ていて刺激になった。明日から、頑張ろうと思った。