サマーウォーズ

サマーウォーズ (角川文庫)

サマーウォーズ (角川文庫)


期待以上によい作品。僕の持っている「夏休みに鑑賞する映画のイメージ」にとてもぴったりとくるもので、とても心地のよい鑑賞感が得られる映画だった。


子供の頃、長期休みにはいると映画を観にいった。東映まんが祭りとかにはあまりいかず、洋画を観ることの方が多かったような気がする。妙に記憶に残っているのは、グレムリンとかオーバーザトップとか。あぁ、懐かしい…。

当時小学生だった僕は、親の仕事終わりの時間にあわせて自宅を出発した。子供一人で電車を乗り継いで銀座にいき、駅付近の映画館で集合。映画が始まる前は、デパートで買ってもらってあった「普段食べるものよりも、ちょっと高級なサンドウィッチ」を食べるのがお気に入りだった。


映画を見終わったあとは、いつもドキドキしていた。直前まで大画面スクリーンと大音響の中で鑑賞していた映画の世界観に、どっぷりとはまり込んでいた。登場人物たちの一挙手一投足や喜怒哀楽の様子に、自分がその場に居合わせているような気持を味わった。しかも、ほとんどは現実にはあり得ないようなこと。それがまた想像(妄想?)を心弾ませるものにしていた。


サマーウォーズを観ていて、そうした「登場人物たちとの共感」や「非日常・非現実への憧憬、想像(妄想)」が湧きあがった。話の展開は想像通りなのに、それでもなお、心が動かされる。登場人物たちの心情が手に取るように分かり、自分自身の感情と同化していく。読み通りに物語が展開するたびに、スカッとするような快感、息を大きく吸い込めないほど胸が締めつけられるような悲しみ、なんとかしたいという思いに心を通じ合わせていく感謝と感動、しんしんと余韻をもって心に響く。


いい映画は、心のバランスを変える。サマーウォーズもそういう作品。観たら、きっと「世の中に役に立つ何かをしよう」という思いが「ふっ」と湧きあがる。それはおそらく、登場人物たちが、「みんなのためという思いを持っている」のと「心も力も弱さがある」ことからきているのだと思う。そして、それらと同時に、「何かの役に立とうと思い願い、実際に役立てるスペシャリティを見つけてチカラを貸すことができたから」ということも大きい。
「登場人物たちが特別だからできた」のではなく、「特別なことを成し遂げるために、誰もが何かしら協力することができる」と、自然に思えるようにメッセージが伝えられているからなんじゃないかと思う。


思い残しや迷い、そうした心に雲がかかっているような気分の時、この映画を鑑賞することでずいぶんとすっきりすると思います。もちろん、元気で幸せな人も、鑑賞することでより一層良い状態を高めることもできるはず(^_^

鑑賞感のとてもよい映画でした。この夏、おすすめの一本です。