ウド鈴木の魅力 「脱力させる面白さ」

先日放送された「リンカーン」でのこと。芸人が自らやりたい企画を持ち込んでプレゼンするという内容。ダウンタウンの浜田が「出演している芸人たちの人脈を生かしたわらしべ長者」という企画をだして実際にやってみたり、キャイーンの天野が「最近のテレビ番組で視聴率を確実に確保できる『衝撃映像』を、出演芸人みずから作る」という企画をだしてボツになったり(^_^;


そんななか、実際に実行された企画のひとつがキャイーンウド鈴木がプレゼンしたもの。その名も「ウドのクイズDEポン!」。

タイトルからして察することができるのだが、まったく内容が見えない(^_^;

プレゼンしている最中も、内容がまったく定まっていない。本人からは「新感覚のクイズ番組」と銘打って紹介していた。「クイズが正解したらくるくるまわって落ちるとか?」といった他の芸人からの質問にも、「そういった感覚をすべて取り払ってくれ」と。

なんだかんだで決まっていたのは、「タイトル」と「司会がウド」ということだけだった。全員内容を把握できないままだったようなのだが、今回企画が実現したのだった。



そんな風にはじまったこの内容。これがなんとも脱力した…(^_^;

まず、司会しているウドがあからさまに空回り。気合がすっごい入っているのか、テンションがものすごい高い。ただ、それが「あたふた」する方にまわってしまって、ただでさえわかりにくい話しの内容がさらにわかりにくくなっていた(笑)
しかも、まわりの芸人が乗り気でない姿勢を貫いていたから、かなりの温度差。これがまたウドを浮きだたせていた。ウドの額が汗でどんどんとテカっていくのが目に見えて分かるくらい。


そして、この企画。内容が斬新というか、わけがわからない。

 ・最初に食事が出されて、解答者が食べる。食べた後、「実はこれが優勝賞品」ということが明らかにされる。
 ・ウォーミングアップクイズとして「犬も歩けば棒にあた○? ○は何?」みたいな問題が出される。しかも、散々時間を使っておいて、「オンエア上はタイトルバックになる」。
 ・その後、少しばかりまともなクイズになると、正解者にチャンスステージが与えられる。ウドとジャンケンしたり腕相撲したりして、勝ったらポイントが入るという。しかも、ポイントはすべてウドのさじ加減。
 ・さらには、ムンクの叫びとモナリザが並べられて「間違い探し」なんていくクイズも飛び出す。これも、正解はウドのさじ加減。しかも、最後には「正解が出そろったところで」といってクイズを切り上げたり(笑)
 ・10点単位で与えられていたポイントが、最後の方の問題ではいきなり1万点単位に。しかも、これまたウドのさじ加減で突然に「○○さんから□□さんに1万点移動」というハンターチャンス的な動きがあったり。

もう、体から力が抜けまくりの30分だった(^_^;



ただ。こういう「脱力させる面白さ」というのも、なかなかに素晴らしいとも思った。脱力させるというと、どちらかというと「がっかり」につながることの方が多い。にもかかわらず「笑える」のだから。

脱力させられるのは
 
 ・内容が飛び過ぎる、もしくは拙すぎる
 ・途中経過(プロセス)が定まっていない、思いつき
 ・終わり(結論、成果)がぐだぐだ

といったことから感じられる。


こんな条件がそろったら、普通なら「やる気がそがれて、実行が滞り、結果も悪い」という流れになりがち。今回の企画も、多少なりともこの状態になってはいた。

しかし。後味が悪くない。何せ、笑えたのだから。


なんで笑えたのだろうか。

 ・そもそも「ぐだぐだ」となることは織り込み済み
 ・ウドが全力を尽くした上での「ぐだぐだ」であったこと
 ・「できてないこと」が許される(望まれる)ウドのキャラクター

ありていにいうと「おバカ」という感じだろうか。でも、少し前までに流行っていた「おバカタレント」のような計算込みのキャラクターではなく、「素で全力を出し切っての結果」としてこうなっていることが、ウドの素晴らしさだと思った。わざわざけっこうな時間をかけてまで日記に書き残したいと思えたのだから(^_^


脱力しながらの笑い。爆笑とちがって、心身や頭がすっきりするという感じではない。どちらかというと、ある種の「どっと疲れがくる」といった感覚に近い後味だ。

でも、そうした後味も、鑑賞している最中の「だるさがありながら笑う」感じも、どっちも奇妙な快感がある。これは、なかなか他で味わえる機会は少ない。


なんとなく、昔はそういう感覚を覚えることが、今よりは多かったような気がする。テレビ番組に限らず、オン(学校や会社)でもそうだし、オフの付き合いでも。なんだか「あくせく」してたり「せわしない」感じで追い立てられることが増えて、そうした余波が世の中に蔓延してしまっているのかもしれない。


脱力させるけど良い。そういうキャラクターを持つ人をもっと尊重して活用できる場を増やせるといいなぁと思った。そして、そもそもそういう人が今よりも増えている(今は以前よりも減っている気がする)状態になると良い、と。