M1 感想 2008

いまさっき終わりました。M1グランプリ2008。
優勝はNONSTYLE。おめでとうございます。実力の割りに無冠の時期が長かったコンビとして有名だったのが、ここ最近は連続しての受賞。M1もそれに続いたということなのでしょう。

ま、僕自身の感想がどうだったかというのもふくめて、書き残しておきたいと思います。


■決勝
今回、はじめて採点してみた。ただの視聴者が何をやっているのかと思いつつ、試しに。やってみて思ったのは、点数をつけるのがえらい難しかったということ。実力差があまりないので、「どっちが上か」という比較を気にしながら1点単位でずらすような感じになったのだった。
    
で、結果はこんな感じ。並んでいるのは審査員の合計得点。
           
 ダイアン・・・・・・・・・・・・・・・・80点:618点
笑い飯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・78点:637点
モンスターエンジン・・・・・・82点:614点
○ナイツ ・・・・・・・・・・・・・・・・・84点:640点
 U字工事 ・・・・・・・・・・・・・・・83点:623点
 ザ・パンチ ・・・・・・・・・・・・・74点:591点
 NON STYLE ・・・・・・・・・・・・・・76点:644点
 キングコング・・・・・・・・・・・・74点:612点
 オードリー・・・・・・・・・・・・・・83点:649点

事前予想したコンビは比較的評価が高かった。モンスターエンジンは、もうちょっと点数が高くても良かったと思うのだけど。どうなんだろう。


以下、コンビごとに個別に感想を。

ダイアンは、昨年よりは面白かったと思う。審査員もいうとおり、たしかによくなっていた。でも、本人たちの思うレベル感と、まわりが感じるそれに隔たりがあったように思う。この隙間を埋めるようなネタになっていなかったのかなぁ、と。
「津田のテンションの高さ」と「西沢の引きの度合い」が魅力なのだと思うけど、観客の視点と重なっていなかったような気がする。本人たちのスタイルかもしれないが、次は合わせにかかる段階にあるように思う。


笑い飯は、惜しかった。これまでと違う入りから中盤にいくまでは、面白かった。かつてのような勢い重視ではないので引きは小さかったけれども、ひじでガラスを割る件なんかは十分によかった。
ただ、尻すぼみだった。後半に盛り上がらないと、M1の点数はシビアになりやすい。たぶん「次のネタを観たい」という気持が弱まるからなんじゃないか。


モンスターエンジンは、初出場の緊張感が伝わってきた(なんというか、間を我慢しきれない感じというか)。僕は、面白かったと思う。すし屋の件なんかも、かなり笑った。
ただ、惜しかったけど、たしかに、決勝三組には届いていなかったようには思う。盛り上がりの構成と焦りかなぁ〜。何かで笑いのブレーキがかかっている感じがした。神々の遊びのコントのように好き勝手にやり砲台している感じて演じられたら、いけたのかも。


ナイツは、さすが。対抗に推しただけのことはある(というか、世間的には本命になっていた感がある)。このプレッシャーの中、あれだけの結果を残したのは見事。それにしてもあの後半の巻き返しは凄かった。正直、前半は「すべったまま終わるか?」と本気で心配になった(^_^;
9組の中ではいちばんデキが良かったんじゃないかと思う。ネタの選択も含めて。


U字工事は、想像していた以上にM1にはまっていた。あの人の良さげなキャラクターと勢い、そしてなまっているけど滑舌のよい発声は受け入れやすかったんだなぁ。
ネタも面白かったのだけど、僕は観たことのあるものだったので、他のコンビと比べるとちょっと辛めになった気がする。あと、少し後半は盛り上がりが落ちていったのも惜しかった。


ザ・パンチは、事前予想で心配したとおりの展開になっていたような気が・・・(^_^;
あのスタイルは、レッドカーペットとかイロモネア、あるいはあらびき団だったら強い。でも、M1のように4分の漫才で、しかも「漫才のあらゆることをガチで評価できる人(審査員)」には合っていない。
あの形で勝ち上がってきたのだと思うし、10年をぶつけるためにもスタイルにこだわったのだとは思う。でも、もうちょっとM1用のアレンジをして欲しかった。もったいなかった。


NONSTYLEは、僕の印象と比べるとかなり審査員の評価が高い。このコンビ、たしかにうまいと思う。なのだけど、ネタとスタイルはM1ではない。ストリートだ。
何がちがうかというと、対象とする客層。ストリートだと、足を止めてもらうためのインパクトと、いつ聞き始めてもいいように短いネタを繰り返す必要がある。しかも、足を止めてくれる人(かつとめて欲しい人)は若い層なので、勢いやわかりやすさが重視される。
でも、M1は「4分間に笑いの渦をいかに込めるか」をデザインできたかどうかが評価されるものだと思っていた。今回の審査員の評価をきいたらそうではなかったようなので、来年からは見方をちょっと変えないといけない。
ついでに本音を書いてしまうと、昨年のキングコングの扱いを、東京に進出してきたNONSTYLEに矛先を変えたという吉本の方針なんじゃないかと思っている。NONSTYLEが悪いわけではなく、大会のマネジメント側の問題と理解していることを誤解しないでもらいたい。


キングコングは、今回は適正な評価だったと思う。こちらのコンビも、事前予想したものと近い感じだった。ネタも技術も昨年より劣ったとは思わない。ただ、審査員が評価を変えたというのが、率直な感想。ま、NONSTYLEのところで書いた感想に同じです。
M1や漫才にかける気持が強いのはわかるし、それはとても好意的に受け止めている。だからこそ、もう一度自分たちのスタイルを作り直すくらいの気持で取り組むというのも、ありだと思う。今のスタイルよりもっともっと面白くなるスタイルがある。


オードリーは、すごい驚いた。敗者復活が決まったとき、「ザ・パンチと似たような系統だからなぁ・・・」という不安がよぎった。しかし、蓋をあけてみれば、めちゃくちゃ面白かった。もともとイロモネアとか、ネタ以外での面白さが印象に残っていたので、きっと実力はあるのだろうと思っていた。今回、それが見事に発揮されていたのだと思う。



といった感じで、決勝9組の観戦を終えた。一部、よくわからない(不安・不満)審査結果もあったのだけど、おおむね順当な勝ち上がり方だったと思う。審査員の点数がばらけていたは興味深かった(特に、例年と比べて松本と紳助の点数の差が大きかったのが印象に残った)。



■最終決戦

で、このあとの最終決戦3組。これはなかなかに見ごたえがあった。3組とも新顔という状況は予想していなかったのだけど、例年と比べても見劣りしない内容だったと思う。

ここでも、いちおう採点してみた。審査結果(点数ではないので得票数)も併記しておきます。

 ナイツ ・・・・・・・・・・・・・・・・・88点:0票
 NON STYLE ・・・・・・・・・・・・・・80点:5票
 オードリー・・・・・・・・・・・・・・90点:2票


ナイツ、よかった。1本目よりもさらに輪をかけて面白かった。メガネの件をこちらにも持ってきたのは、決勝3組に残ったコンビにしか味わえない喜びだったことだろう。メガネの件をみたとき、きっと城の件もやるのだろうと思っていたらやらなかったのが惜しかった(^_^;
とはいえ、最終審査で1票も入らないほどの差はない。得点じゃないからしょうがないのかもしれないけど、この審査結果は彼らにとってあまりにも酷。


NONSTYLEは、1本目よりは面白かった。こちらも、携帯の「ビヨンビヨン」の件でてんどんしていて、ナイツと同じ喜びを味わっていたことだろう(^_^
ただ、やっぱり、強烈なパンチのあるネタが入ってなかったように思う。なので、僕の好みの問題なのかもしれないけど、他の2組よりは評価は低くなった。


オードリーは、かなり驚いた。あのネタ、すごいと思う。あんな漫才、みたことない。真似するやつ、すごいたくさんでてくると思う。
細かいネタひとつひとつの面白さや爆発力、あるいは漫才そのものの技量については、他の2組には劣っていると思う。春日頼みになっている面があるのは否めない。でも、あのネタの発想は、それを十分に補っているものだと思った。
漫才のテクニックは、M1チャンピオンになって重責を負わされて世間にさらされる中で、1年もあれば身についてくると思う(つぶれてしまうかもしれないけど)。でも、ネタの発想は、それでは身につけることはできない。
だからこそ、ネタの発想に分があったオードリーが優勝するのにふさわしかったように思った。





という感じで、いろいろと文句を含めながらも、感想をかいてみました。とはいえ、今回、レベルが高かったのは事実だと思う。少なくとも、底上げという意味ではかなりインパクトがあったような気がする。
ただ、一方で、爆発力のあるコンビの優勝がなくなってきているとも思う。フットボールアンタッチャブルブラマヨチュートリアル、彼らが優勝したときは、本当に大爆笑をひっさげてもぎとっていた感があった。昨年も今回も、衝撃よりは魅せるほうの度合いに傾きが強くなってしまっているように思う。悪いことではないのかもしれないけど、観ているほうのドキドキ感とか面白さは、微妙に影響するものなので。

このあたりも含め、M1が今後どうなるか、ということについては、なんともいいにくい。昨年のblogにも書いた「K1化するM1」が着々と進行しているように思う。いちばん怖いのは、芸人以外の要素(運営側の都合)による仕切り度合いが強まっていくこと。5年くらい前から臭いはじめて、年を追うごとに臭いが強まっている感じがする。


とはいえ、毎年の年末恒例行事。僕もこれに合わせてお笑いに注目している。なんだかんだありつつも、M1を観ていると面白いし、いろいろと勉強にもなる。何よりも、ここに懸ける芸人たちの熱さは、観ていてとても心地いい。自分も頑張ろうという気にもなる。

ぜひ、今後も続けて、もっともっと素晴らしい運営がなされて、素晴らしいチャンピオンを排出し続ける大会となって欲しい。