ハッピーフライト

ウォーターボーイズスウィングガールズの矢口監督の最新作。個人的な感想だと、この作品がいちばん面白かったんじゃないかと思う(といっても、ウォーターボーイズはきちっと見たことがないのだけど)。最初から最後まで途切れずに話が進んでいたし、笑いもいい塩梅。何よりも緊迫感の伝わり度合いが、とても良かった。

この作品、たくさんの面白さがあったのだけど、その中でも印象に残ったのは「緊急時に何をするか」ということ。あるいは「そうならないために何をするか」。


■みんなが一丸となる
大事が起きたとき、どこまで当事者行動を伝播させることができるか。組織力があるかどうかは、ここで判断できる面が大きいと思う。

よろしくない(かつ、ありがちな)のは、「責任追求に巻き込まれない」という姿勢やふるまい。そこまで極端な度合いではないにしても、縦割り発想による回避はよく目にする。「あいつらが悪い」とは言わなくても、困っている部隊を見たときに、どこまで介入しあうことができるか。

だいたいの場合、お互いに壁をつくってしまっていると思う。問題が起きた様子を観ている側としては、先にも書いたように「問題に巻き込まれるのは面倒」と思っていたり。問題が起きた側にとっても「余計な首を突っ込まないでくれ」と思っていたり。あるいは、お互いに「相手がそういう風に思っているだろうから・・・」と躊躇してしまうこともあるだろう。

では、うまく一丸となるには何が必要なのか。思ったのは「同じお客様を見ているかどうか」にあるんじゃないかと。「自分が担当していない顧客」を自分のお客様と認識して、仕事に取り組めているかどうか。

もうひとつは、役割分担が適切に明確になっていること。縦割りっぽいイメージになりそうだけど、そうではなくて「今この瞬間、お客様のために自分が何をやったらいいか」がわかっていれば、何かがあったときに自働的にものごとが進められるのだろう、ということ。指示がなければ動けない、なんてことがないように。

こうしたことができていると、「この仕事は自分に関係ないからやらない」という姿勢が抑えられそうな気がする。緊急時になったときほど、こういう動きが加速するのは、いい組織だと思う。



■厳格な日常によって支える
緊急案件が発生したとき、必ず応急処置が必要となる。そのためには「そのときにやるべきことが予め定められている」ことと「それを再現できるほどに訓練されていること」が重要。

やるべきことは、マニュアルで定められているのが、いちばんわかりやすい。マニュアルというとイメージが悪い面もあるのだけど、四の五の言っている猶予の無い中で動くためには、はっきりと決まった段取りがないと厳しい。特に、乗客の命を預かるような場面では、「これをやればいい!」と確固たる軸がなければ、押しつぶされてしまう。お客様に向けて「従ってもらう」場面もでてくる状況では、特に重要なんだろうと思う。

そして、そうした段取りを、いかに現場で再現できるか。そのためには「より現場に近い状況の体験」と「徹底した反復」が重要なのだと思う。シミュレーションを通じた訓練を何度も繰り返すこと、というのがわかりやすいところ。

でも、それだけではないのだとも思う。「そうした緊迫感と同じ状況を経験する」ことも、有効だと思う。同等レベル以上の不安状況への耐性を持てるような体験であれば、まったく違う内容のことでも緊急時対応の向上につなげられるように思う。


また、こうした応急措置のほかにも、普段からの心がけが何よりも大事なのだと思う。そういったミスが起きないように徹底すること。作品の中でも、数分の遅れに叱責が飛び交うなど、気の緩みから招いたミスには厳しく接する様子が描かれていた。

ただし、日常からの厳格さを求めるときは、対象のメリハリをつけることが大事だと思う。多くの場合「必要ないことに、必要の無いレベルで管理を求める」ということが、適正な運用を阻害していると思う(定着しない、あるいは正しくない)。



この作品では、航空会社における緊急事態を舞台に繰り広げられていたこともあって、そうしたことがわかりやすく考えられるようになっています。これは、普段の仕事を振り返るときに、とても参考になるものだと感じました。

そして、何よりも思うのは、お客様に対する姿勢。普段はなんだかんだあるものであっても、いざとなったら全力をお客様に捧げるという意識と行動。こうした姿勢を自分ももって仕事に取り組めていけるよう、気を引き締めなおしたいと思います(^_^



なお、この作品、ここまで書いたことのほかに、「ベテランの意義」というのも気になったのですが、この映画以外の話も含めて考えていたことがあったので、別の日記で書きます。