御コント1 平成ノブシコブシ

ノブシコブシのライブを観るのははじめて。
他のライブでピン芸を見ることは多いのだが、二人のコントは数えるくらいしか見たことが無い。どんな感じになるのか、いまひとつ想像しきれない状態で観にいってみた。

会場について驚いたのは、客層だった。ルミネの7階フロアに集まっているのは、普段にも増して若い女性の比率がすごい(いつも以上に会場が遅い運営には辟易したことを付け加えておく)。ノブシコブシって、そんなに新人というわけでもないので、ここまでこの層に人気があるというのはちょっと意外だった。

しかも、会場後に座席に座ってみると、まわりから聞こえてくる会話がこれまた意外と濃い。あきらかにノブシコブシファンだな、とわかるような内容なのだ。正直、会話を聞いてもこちらがわからないこともあったり。ただのミーハーではない感じなのはわかった。イメージだけでいうと、ジャニーズファンと近いはまり具合なのかもしれない。


そんなこんなするなか、ライブがはじまった。


(1)オープニング
 はかま姿の二人が並んでいる。徳井が会場側を向き、吉村は背中を向けている。なにやらポージングしつつはじまった。それは、「能」風のコント。しゃべりと動きは能なのだけど、内容は風俗にいったというシチュエーションのもの。下系の言葉を発すると、会場もそれにのってわいた。さらに連呼していくうちに、妙な雑音がまじっていた。

 声のほうを向いてみると、一人の男性が舞台に向かって「何、下ネタのコントなんかやってんだ! そんなのみにきたんじゃない!」といった感じのことをどなっていた。最初、客を無視していた二人だったが、吉村が絡み始めた。
このやり取りの中で、「そんなんだから、コンバットおろされるんだ!」という野次があったのがおもしろかった(^_^

 もめた挙句、「だったら舞台にあがってこい!」という吉村の言葉とともに、たくさんの仲間を追加して舞台に攻め込んでいく。という演出だった。
※ちなみに、舞台前にトイレにいったとき、この舞台にあがっていた面々を何人もみかけた。もうちょっと気をつけたほうがいいと思います。

 その後、殺陣がはじまった。徳井はかっこよく、その後に吉村がコミカルに、という流れ。いずれにしても、会場の盛り上がり方は驚いた。完全にアイドル的な視線と歓声が向けられていた。

思いのほか長く繰り広げられたオープニングは、かっこいいノブシコブシを期待していた客にとっては、大満足のないようだったんじゃないかと思う。ま、自分はそういう期待をしていたわけではなかったのだけど・・・(^_^;


(2)駄々
吉村ふんする子供が、徳井ふんする父親に「クレープかって〜」と駄々をこねるというネタ。吉村をひきずりまわして罰ゲーム的なことをするというもの。


(3)吉村くん家
吉村の家に隕石が落ちてきて、二人で支えるかっこうになったというネタ。手を離したら隕石が落ちるという縛りの中で身動きできないというものから、徳井に向かって切れる吉村は隕石から離れて切れまくるという展開に。


(4)がんばれ般若くん
レストランでアルバイト。オーナーの徳井と、般若の面をかぶっている吉村。
般若は言葉が話せないという設定。徳井が新人の般若を気遣い、いろいろと話しかける。それに身振りで答える般若。この身振り手振りのジェスチャーを面白くやるという。
印象に残ったのは「CanCam」と「AneCan」のポーズの違い。



(5)働く男
エレベーターを手作業にて上げ下げするという仕事をしているという設定。吉村が実際に引き上げる係り。
最初はエレベータに人が来るたびに「重い!」という辛さで笑いを取るというところから。そのうち、エレベータに乗ってくる客が変わっているので直接接しに行くという流れに(つるのたけしを真似たふくろとじがでていたのが面白かった。最初は彦麻呂の真似だと思っていたので、さらに笑ってしまった)。
最後の人殺しのあたりのくだりは、観客がものすごい引いた(寒かったわけではなくて、そんな展開にするのかという驚きと戸惑いという感じ)。自分の印象としては、終盤の展開のよさもあって、このネタがいちばんよかったと思う。


(6)W.C
もれそうなサラリーマン二人が、トイレに入りたいのだけどあかなくて、右往左往するというネタ。
で、ひととおり終わってから「ふたりが関西人だったら」「ふたりが中国人だったら」というバリエーションをみせるというもの。


(7)友情の川原
川原でバーベキューの片づけをしている徳井、話しかけにきた吉村という設定。
徳井の話をきいているときに、川に向かって石を投げる吉村。すると、大きな石になってもどってくるという。ここから何度も繰り返し、石以外のものを投げて、何がかえってくるかという。


(8)がんばれ般若くん
今度はハローワーク
なんか、ネタの流れで最後は吉村が床に横になった。でも、その状態から、指で罰印をつくっていた。スポーツ選手が退場するときにやるような感じで。で、徳井が締めの言葉を発して暗転。
これ、予定通りなのかどうか、よくわからなかった。
※しかし、エンディングにてなんとなく状況がわかる補足があったのだった。


(9)「山下」
徳井が医師(吉村)に相談に行くという設定。
山下病にかかっているという。それは、キーワードをいってしまうと山下達郎の曲がかかってしまうというネタ。


(10)がんばれ般若くん
今度は、バー。よいつぶれている般若くん。バーテンの徳井に、最後ということでカラオケを1曲せがむ。しょうがないということでかけられた「いつもの」曲は・・・。
モーニング娘のラブマシーン。


(11)夢
75歳の老人。ふたりとも清掃業者につとめている。
徳井扮する老人には夢があるという。それは、F1レーサー。
吉村はそれをかなえるためのステップとして、近くにある道具(台車とかダンボールとか)をF1車にみたてて、ふたりでレース的な雰囲気をあじわうという。

このネタ、面白さとは別なところでかなり印象に残った。それは
 「75歳は、夢を見ちゃいけないのか」
 「そんなんだったら、(人間じゃなくて)プラスチックだ」
といった言葉。
なかなか深い。


(12)エンディング
二人が登場してきてあいさつ。Tシャツ姿の吉村に対して、警察官の格好をしている徳井。小さかった頃になりたかった職業だったらしい。
吉村曰く「ルミネでは、1着発注するのに3〜4万円かかる。今回はこのためだけに、その金額をつかったと」。

そして、締めくくり。
翌日もこのイベントをやるということだったのだけど、吉村は言った。

「般若くんは、やりませんから」

これ、爆笑。
どうも、お面をつけてしまうので息ができなくなるらしい。床に倒れたときは、まじだったのでしょう。


ということで、終了。




正直な感想をいってしまうと、期待には届かなかった。他のイベントでの活躍からすると、パフォーマンスが発揮されつくしていない気がする。

ひとつは、ネタ。芸風のわりに、ものすごくオーソドックス。それ自体は悪いとは思わないのだけど、その割にはひねった終わり方を好もうとする。「実はこうでした」みたいな。ただ、オーソドックス度合いが強くて、ネタの展開が読めてしまうものが多い。
働く男は意外性が強い終わり方をしたので、けっこう良かったと感じたのだった。かなりの変化球なので、こういうネタばかりにするわけにはいかないとは思う。同じくらいのインパクトのあるオーソドックスな自分たちならではのスタイルが見つかることを期待している。
ピンでもあれだけ面白くやれるチカラがあるのだから、コンビでもっと面白いネタができないはずがない。


もうひとつは、客層への意識。オープニングがいちばんわかりやすかったのだけど、アイドル視しているファン層への期待にどこまでこたえるか、というあたりが気になった。正直、このコンビの持ち味は「破天荒さ」にあると思う。破天荒じゃないんだけど、破天荒な言動につっこんでいくという、緊張感と勢い。でも、今回のようなネタだと、それが活かしきれてないと思った。かっこよさを魅せることを盛り込んでしまうと、破天荒さからは遠のくのかもしれない。


ポテンシャルの高さに比べて、活躍の度合いが弱いノブシコブシ。もっともっとはじけたことをやってほしい。それは僕の期待なのだけど、その先にすごく大きな展開につながるとも思うので。