僕らのミライへ逆回転

ぶっちゃけていってしまうと、予告編をみたときから実際に映画を鑑賞し終わった今に至るまで、「ずるいっ!」という言葉が頭に残っている。いんちきしているわけではなくて、「そりゃ、笑うよ、これ」という意味で「ずるい」と。
あんなリメイクされたら、がきの使いやあらへんでで「笑ってはいけない」シリーズのネタとしても使える(というか、以前、スターウォーズC3POR2D2で似たようなネタは、何年も前に実際に使われているし)。

まあ、そんなわけで、なかなかに笑わせてくれたこの映画。「ぶっ!」と噴出して笑ってしまうタイプの作品。
とはいえ、笑うだけではなくて、ジーンとさせたりほろっとさせたりする作品でもある。特に、後味についてはコメディというよりはドラマ的なちょっとした感動のほうが強いと思う。


という、なんとも内容が想像つきにくい前置きになりました(作品の詳細が知りたい方は、HPをみてみてください)。



この作品から思ったことは、ふたつあった。それは「想像・創造に必要なこと」と「力を合わせること」。


■想像と創造

この映画、物語上の大きなポイントとなるのが、名作映画のリメイク。それも、ただのリメイクではない。予算も技術もない素人が、それを補う時間すらかけることなく作るリメイク。

こうした状況から作られるリメイクは、それはもう安っぽさ満載。ちょっと間違えば、中高生が文化祭の出し物でやって、内輪受けするための作品みたいな感じ。物語上の位置づけとしても、そういう扱いになっている。
※実際は世の中に公開される映画ということもあって、「ただのチープではない」つくりとなるように工夫は凝らされているけど。

こういう安っぽさ、実はとても大事なチカラに関わっている。それは、想像力。莫大な予算をかけて最先端の技術を導入し、膨大な時間を投入して実現した映像。これをちゃちいもので再現するというのは、意外と難しい。やってみたとしても、「似ても似つかないまったく別物になってしまう」か「まったくつくれない」のいずれかに陥ってしまうことも多いと思う。

すっごい離れているのだけど、意味合いを理解できるほどにはかすかにつながっている。この絶妙な距離感と按配を探し出してきて実現できるかどうか。このさじ加減が、想像力のひとつの要素なんじゃないかと思うのだ。先日書いた「木村祐一」の日記に書いたことと通ずることでもある。


また、創造についても考えることがあった。
それは「リメイクは、創造なのか?」ということ。これ、けっこう迷う。なんとなく思うこととしては…
 ・まったく同じ内容を使うリソースだけを変えて実現した場合は、創造ではない
 ・相違点があっても、製作者に意図が無い偶然の結果論のみである場合も、創造ではない
というあたり。盗作の難しさと似ているような感じもある。
あるいは、「いったもん勝ち」みたいな感覚をもたないこともない。


創作活動に携わるとき、少なからず想像と創造が関わってくる。どちらについても、自分なりの(かつ、まわりに理解を促すことができる)基準をもつことが必要な気がする。それがないと、製作過程で自分の意思がぶれてしまうことがあると思った。



■力を合わせる
この物語、とある古びたビデオレンタルショップが舞台となっている。
ここに関わる人たちが、少しずつ事件を繰り返しながら、巻き込み・巻き込まれる輪が広がっていく様子が描かれている。時には悪巧みをしたり、遊び心で悪ふざけしたり、なんかみんなでわいわいやってしまったり、大切なものを守るためにチカラをあわせたり、そうした姿を通じて感動を受け取ったり。

映画をみていて思ったのは、「こうした輪ができるのは、どういうときなのだろうか」ということ。

 ・共通する利害関係(あるいは共犯関係)を持ったとき
 ・何か面白そうだと感じたとき
 ・誰かのためになりたいと思ったとき

前に挙げたものほど即効性が高くて、後に挙げたものほど持続性とパワーが強くなるのだと思う。


もうひとつ思ったのは、輪を維持するのに必要なことはなんだろう、ということ。
輪ができて活動をすると、場面場面でみたときには、必ず活躍している主人公的な人と、まわりにいる脇役的な人、サポートに徹する黒子的な人、という感じで役割分担が起きる。この関係が偏りすぎたり安定しすぎたりすると、うまく回らなくなってしまうことはありがちかなぁ、と。

どんなことを工夫するといいのだろうか。ぱっと思い浮かぶのは

 ・嗜好・志向(向き不向き)にあわせた役回りに配慮する
 ・役割が変わる機会をつくる
 ・相互に感謝し合う

といったところだった。

そのためには、そもそも
 ・集まって何をしたいのか(結果としてつなげたい方向性)
 ・どういう人に集まってもらうか(偏らせる要素とバランスととる要素)
といったところをきちんとしておく必要があるかもしれない。


ん〜、なんだか頭がまわらなくなってきたので、ひとまずこのへんで…(^_^;




チープな雰囲気が苦手な人にとっては、ちょっときつい映画かもしれません。でも、そういう面白さを求めるときには、ぴったりと当てはまる映画です。少なくとも、僕は面白かったし、笑いました(まわりにいた観客もたくさん笑っていたし)。

いろいろなリソースが不足しているからといって、何もできないなんてことはない。そうした状態から起こした行動であっても、心を打ち、動かすことができる。

そういう気持ちを残すことができる作品だと思います。



余談ですが、ジャック・ブラックの好き嫌いと作品の印象は一致するかもしれません。ジャック・ブラック、味を全開に出す演技が満載なので。最近みたほかの出演作品と比べても、目いっぱいだしまくっているような気がした…(^_^;