キングオブコント2008

先ほど、第1回が終わった。
優勝はバッファロー吾郎で、準優勝にバナナマン。事前予想では、1・2位を争うだろうと思っていた二組がそのまま残ったので、順当な大会だったのかなぁとは思った。
初回の運営はなかなか難しいところが多いと思うのだけど、他の大会で培われたノウハウをうまいこと取り込みつつ、オリジナルのルールを入れたのはうまかったように思う。

といった全体の感想はありつつ、ちょっと振り返ってみる。


■決勝予選

それぞれ、僕の採点と実際の点数を並べてみる。

・Aグループ
 TKO        360 ⇒ 368
 バッファロー吾郎 400 ⇒ 460
 ザ・ギース    350 ⇒ 400
 天竺鼠      410 ⇒ 388

しょっぱなのTKOの点数を見て、だいたい意見が一致した採点になるのかな、と思ってみていた。ところが、そのあと二組は、だいたい50点くらいずつ開きがある。で、天竺鼠はわかる範囲の誤差(僕も自分の採点が高めだと思いながらつけていたので)。

この原因はふたつあると思った。
ひとつは、審査員がしょっぱなの考慮をあまり入れてなかったこと。考慮するべきものは「基準点になるので、最高・最低にならないようにする」ということ。これ、M1の審査員はみな意識しているみたいだけど、今回出演した審査員は意識が弱かったように思う。だから、その次のバッファロー吾郎との点数差がここまで開いてしまったのだろう、と。
もうひとつは、バッファロー吾郎で引き上げられた「基準点数」が、そのまま後続のグループに引きずられてしまったこと。ザ・ギースの点数は、高めに偏っていると思う。


・Bグループ
 チョコレートプラネット 280 ⇒ 415
 ロバート     390 ⇒ 473
 バナナマン    460 ⇒ 482
 2700     400 ⇒ 327

こちらは、1組目から高得点で、ロバートが高得点過ぎてバナナマンは厳しくなるかと思いきや、きっちろと勝ち抜いたのが見事だった。2700だけ異様に点数が低いが、内容は決して悪くなかった。

チョコレートプラネットは、完全に審査員のミスだと思う。Aグループからうつるときの点数基準切り替えを、うまくできていなかったんじゃないだろうか。この点数を本気でつけていたのだとすると、ちょっと残念に思う。ロバートの点数も、それに引きずられた基準になってしまったと思われる。

ただし、バナナマンがきちんと勝ち抜ける点数になったのは、良かった。ここが外れていたら、この大会をぶちこわしていたと思う。正直、バナナマンとその他3組との差は、実際の点数差よりも大きい。

いっぽうで、2700が異常に点数が低い。原因がまったくわからない。このコントの質を目利きできないとすると、芸人としての能力を問われてもやむをえないと思う。素晴らしかったのは次長課長の河本が言った「もう100点プラスでもおかしくない」というコメント。こういう姿は、もっと拾って評価されるべき。



といった感じで、細かい部分にはそこそこ不満が残った。ただし、勝ち抜いた二組の選定については納得できるレベルだったので、全体としてみるとうまくいっていると感じた。



■決勝
決勝は、バッファロー吾郎バナナマン。結果はバッファロー吾郎だったが、個人的には逆の評価だった。バッファロー吾郎のコントは面白かったけど、コンテスト向きのネタじゃなかった。彼らがやりたいネタを持ってきたのだと思うけど、キングオブコントという基準で適正な審査はされていなかったと思う。

といっても、大きな差があったわけでもないので、バッファロー吾郎の優勝に反対するわけでもない。キャラクターとは裏腹に、とても一途にお笑いに取り組んでいる姿勢は、観客として知りうる限りで柄はあるけど理解している。今回の優勝は、とてもいい結果だったと思う。

個人的に優勝だと思っていたバナナマンにとっては、残念だった。ただ、優勝したとしても、ちょっとだけ引っかかることは残っていたと思う。それは、彼らのネタが2本とも数年前から演じられているものだったということ。徹底的にくった自信のネタということでもってきたのだと思うけど、新鮮味が欠ける分、面白さの度合いが落ちていたように思う。
観客や審査員がどう見ていたかはわからないけど、僕自身には今回の結果はやむなしかなぁ、という感覚もあった。ということで、準優勝でおめでとう、といえる内容だったと思う。コントそのものについては、優勝の出来だった。



■審査について
今回、内容に違和感を感じた。それは、ほとんどは「審査」について。ここまでに書いた部分でも触れているけど、けっこう多くの疑問を感じた。M1やR1といった、他の大会と比べても、うまくいってないと思う。少なくとも、評価される側と観客の立場からすると、かなり乖離していたと思う。

まず、審査の体系について。準決勝敗退者という当事者による採点は、面白い試みだったと思う。最前線の評価を的確にできる可能性も高い。ただし、次のような懸念事項に対する運営側の配慮が足り無すぎたと思う。

 ・一人あたり5点では、持ち点として少なすぎる。
  1点違うと100点満点でいえば20点。これは、なかなか差をつけにくい。「実際の実力の差」と「点数差」が離れがちになってしまう。

 ・点数を公表しないのと適正な採点が阻害される。
  自分が何点をつけたか、人に知られるとなると「笑いをどれくらいわかっているか、まわりから判定される」というプレッシャーがかからないので、適当になる可能性がある。そうなると「事務所が同じ」とか「先輩・後輩」とか「(付き合いとして)好き嫌い」、純粋な対決の場にあるまじき最低なバイアスがかかりやすい。
  ※ちなみに、決勝でバッファロー吾郎に入れたのは「よしもと所属」か「関西出身」のいずれかを満たしていた。これは、偶然ではないと思うが、どうだろう。バッファロー吾郎が悪いのではなく、審査した側の資質を問うている。


他にもありそうだけど、この二点は絶対に解決しなければならない課題だと思う。


ちなみに、審査について考えていたとき、ふと思ったことがあった。それは「審査員をベテランがやる理由」。

以前から、ベテランが審査員をやる理由にいまひとつ違和感を憶えることがあった。一般常識的な意味合いはわかる。だけど、大きな懸念として「昔からの価値観に縛られてしまう」ことがあった。実際、M1や各種コンテストでも多少の弊害は見えていると感じる。

しかし、今回の審査を見て、ベテランでなければきつい面があるとも思った。それは、「採点する相手が、基本的に後輩」ということ。余計な気を使わなくていいというのは、審査をする上でとても大切だと思ったのだった。最も大きなバイアスになりやすい「上下関係」を防げるだけで、だいぶ信頼性が増すのだろう、と。

また、ベテランくらいの立場になれば、自分の軸をしっかりと持っている人を呼べるだろうし、そうしたものを貫ける度量を持っている人もいるだろう。この面子を意識して揃えているのが、M1だと思う。あの審査は、なかなか良くできているとあらためて思った。
※もちろん、課題もあるけど。



■ルール
ルールについては、今回は探り探りだったと思う。相当に考えた結果だとは思うけど、やってみないとわからない面は多かったと思う。そういう意味では、特に問題的なことはなかった。

ひとつだけ思ったのは、「コントの5分は微妙」ということ。キングオブコント以外の各種コンテストでも、だいたい同じくらいのネタになるのだとは思うけど。コント王を決めるというのであれば、10分〜15分くらいで戦ったほうがいいようにも思った。
テレビ放送が前提だから尺として設定しにくいのだろうけど、本当のコントの力を見るには、これくらいの長さが望ましいと思う。シチュエーションやキャラクターの設定の広がり度合いが、ずいぶんと高められると思うので、ネタの良し悪しもはっきりと見分けやすくなりそうな気がした。



といったところで、キングオブコントの振り返りでした。

いろいろと思うところがありましたが、それでも、この企画はいいものだと思う。漫才をやらない芸人もたくさんいると思うので、彼らが脚光を浴びることができる機会を作るのは、素晴らしいことだ。実際、バナナマンのように、相当な実力があるのにもかかわらず無冠の芸人たちもいる。こういう人たちが適正に評価と栄冠を受けられる場として、発展していって欲しい。

とりあえずは、来年に向けて課題への対策を進めてもらい、さらに面白く素晴らしい大会を繰り広げて欲しい。1年後、今回以上に爆笑と感動を得られるような大会を期待したい(^_^