めちゃいけオファーシリーズ

今回で12回目らしい。
僕は、たぶん、ぜんぶ見ている。あしかけ15年くらいになるのだろうか。

そして、今回の内容も、とても面白かったし、感動した。ちょっとやりすぎなところもあるのだけど、それを踏まえてもすごくよかった。いっときは「子供に見せたくない番組1位」なんて評価をされていたこともあったけど、この企画を見てもそう思っている人がいるのだろうか。そういいたくなるくらい、よくできていた。


この企画、まず、何をさておいても、いちばんの立役者は岡村。
今回でいうと、2週間であの上達ぶり。僕はテニスについてはまったく素人なので、どれくらい凄いことなのかはピンと来ないところもある。でも、プロを相手にした試合で、観客をわかせることができることの凄さはわかる。

このオファーシリーズ、少なからず岡村の運動神経のよさに支えられている面は多いと思う。今回のテニスにしても、前回のEXILEにしても、ずいぶん昔のSMAPにしても。具志堅用高とのボクシングなんて、その最たるものだろう。この素養だけでも、この企画ができるかどうかでふるい落とされる人はとても多いと思う。

さらに、何よりも優れているのは、姿勢。今回も松岡修造が「精神力」という言葉で、オファーを出した理由としてたたえていたもの。観ている人に感動を与える根幹は、ここにあると思う。

ひとつは、本気で取り組んでいること。
放送は限られた時間分に編集されただけになっているのでわからないけど、短期集中である分、その密度は相当に濃いと思う。その分、きつさも高まっているだろうに、仕事と並行して取り組んでいる仕事は胸を打つ。だからこそ、時折見せるぐったりとしたり、ごねたりしている姿にも共感が湧く。
はじめたときの喜び、壁にぶつかったときの戸惑い、うまくできたときの喜び、強大な目標を前にしてても立ち向かう姿。どんなときも全力で、真剣にやっている感じが伝わってくる。

その一方で、本職であるお笑いの姿勢を忘れないこと。
ちょっとした面白い動きであったり、ぼやきであったり。あるいは、自ら意図しないハプニングに巻き込まれてでも笑いをとったり(これも才能)。
自分が本来的に果たすべき役割、期待されていることを、きちんとこなすことを外さないのは、なかなかに見事なことだと思う。

そして、まわりを巻き込む動き。
本気と笑いの姿勢が元になっているのだと思うけど、岡村の言動はまわりを動かすタイプのものだと思う。
気合を入れるために大きな掛け声を自らあげる、まわりにも声をかける、ちょっとしたことにも競争しにかかる、などなど。しかも、いずれも、自ら楽しみながらやっているように見える。だから、降りかかられた相手も、それに乗って、しかも楽しんでいる。
岡村がいるときといないときで、その場の様相が違うことに気づくことができる。そして、それによって「岡村がいなくても、いるのと同じ状態になるよう自ら動く」という流れを生み出せる。
岡村は、そういう人物なんじゃないかと思った。

これだけではないと思うけど、岡村という人物の素晴らしさをあらためて実感する機会だった。



とはいえ、この番組企画、岡村だけで成立しているわけでもない。他の要素も、なかなかに素晴らしい。

今回であれば、企画発端者という松岡修造。
この人の「根拠ある・ない、両方を兼ね備えた熱さ」と「現実を知り尽くしてきた冷静さ」は、他にはいないくらいエッジが効いていると思う。どこまで本当か嘘かわからないまくし立て方をされると、聞いている方は混乱する。でも、その混乱を自信につなげていく。挑戦する心にもっていく。このさじ加減が絶妙だと思った。
このあたり、教え方のうまさにもつながっていて、本当に感心した。松岡修造プロジェクトの番組はよく見ていたからイメージはあったけど、素人相手に教えるうまさを見たことで、さらに実感が強まった。

他にも、サービス精神の旺盛さ。そして、自分が大好きな様子。自分も他人も愛せる人は、素晴らしいと思う。この人は、この極端な例だと思う(きっと、愛せないタイプもはっきりしているのだと思う)。

正直、たぶん、僕にとっては苦手なタイプなところもあるのだけど、それでも興味が沸いてくるし、何よりも尊敬に値する人物だと思う。



あと、矢部もなかなかにうまい。
相方が主人公として脚光を浴びまくる企画、幾ばくかの嫉妬めいた思いがわくものだと思う。実際あるのかどうかはわからないけど、放送から伝わってくるのは、相方を思う様子と、いかにしてこの企画がより楽しめるように媒介できるかという自分の役割に徹する姿。

頑張っている人に「過剰介入せずに、適度につっこむ」のは、実はいちばんうまいかもしれない。ツッコミが上手い人はたくさんいるけど、こういう形で自分を抑えた絡みをやっている人はあまり記憶になり。

ということで、これまた素晴らしいと思う。
※なお、松岡より後に書いたのは、より縁の下の役割を適切にこなしていたから、という意図があったことを補足しておきます。



ところで、この番組。優れているのは出演者だけではない。実は、この放送内容をつくりあげているスタッフたちがかなり優秀なのだと感じている。
そのすごさは「感動を生み出すフォーマット」を持っていること。これについては、また後日書きます。