20世紀少年(1)

よくできている、という印象が残った。前評判であったり、宣伝なんかをみるたびに抱いていた印象が、そのまま作品にも通じるものだった。


僕は原作を全巻揃えているので、どうなるかなぁとちょっと不安を持っていたのだ。その不安はうまく解消されていたように思う。
※ただし、僕がこの作品のフリークだったら微妙かも。面白いので全巻そろえているのだけど、思い入れが一定レベルを超えたファンほどでもないので。



この作品のよさは、原作を可能な限りそこなわずに映像化したことにあると思う。
脚本やカットはもちろんのこと、役者の外見に加えキャラクター、CGにいたるまで相当に原作への意識は高かったと思う。原作の人気(というかファンの深さ)が高い漫画であるだけに、このつくりは正解だったように思う。



実際、感心するほどよく原作に近い内容だったと思う。


大きな要因は、役者。この映画をつくるにあたって、すべての人が相当に意識をおいた部分だと思う。ケンジの唐沢、オッチョの豊エツ、ユキジの常盤貴子、みな似てる。ケロヨンの宮迫なんて反則だと思う。
外見以外にも、このあたりは感じたことがある。なんというか、演技は役者それぞれの個性が残っているのだけど、キャラクターからあまり離れていない印象があったので。これって、役者そのものが原作のキャラクターとオーバーラップするところがあるからなんだろう、と。



そして、演出にも驚いた。各種小道具や撮影場所、構図にいたるまで原作の雰囲気が感じられた。これ、場合によっては作り手にとっては抵抗を感じそうな気もしたのだけど、たぶん、この作品に関しては全員一丸となってこのつくりを目指したんじゃないかと思った。


特に印象に残ったのは、CG。後半に登場してくるCGを多用したシーンは、なかなかのものだったと思う。原作ではいまひとつぴんとこなかったロボットの動きや音のイメージを、観ていて「なるほど、こういうことか」と思わせられるところまではもっていけていたと思う。

※ちょっと気になったのは、なんとなく「テレビっぽいな」という感覚を覚えたところ。悪いことではないのだけど、映画を観ているのか、テレビのドラマスペシャルをスクリーンでみているのか、混乱することもあった。これは、ドラマを数多く手がけた堤監督の個性が発揮された面もあるのかもしれないけど、僕にとっては若干の違和感につながった。



この作品の出来を感じたのは、映画を観終わってからも続く。それは、観客の会話。
席を立ってから映画館をでるまで、まわりから映画のシーンについてのやりとりが聞こえてきたのだ。「あそこでケンジが〜」「あのときともだちが〜」と、原作を知っているからこそでてくるような会話やら、原作を知らないけれども映画を楽しんだような言葉やら、いろいろと飛び交っていた。


平日の夕方くらいの時間にいったのだけど、席もかなり埋まっていた(僕が入ったのはシネコンで、500名は入る大き目のスクリーンだった)。これだけの人数が見に来ていて、かつ、不満の声よりも楽しめた印象の言葉ばかりが耳に入ってきたことが、作品の魅力をいちばん感じる瞬間だったかもしれない。


ということで、この作品、原作もののなかではかなりよくできていたと思う。世間での評判は高いものと酷評しているのと別れているのだけど、酷評している人はちょっと斜に見すぎなんじゃないか、というのが個人的な感覚。決して、最低レベルに評されるようなものではない。
「最高レベルの原作を、その味を落とさないように映像化した」のだから。