ベガスの恋に勝つルール

予告編の印象とかから、なんとなく自分好みなんじゃないかと思っていた。で、作品イメージが先行してしまった。実際に見てみたらちょっとちがうところがあって、特に前半はどうしようかなぁと思ったり。
でも、後半にしたがって、好みに近いところも増えてきて、そこそこ満足。



こういう感じのラブコメって、すごいと思う。どういうところからそう感じるかというと、感情の機微の描き方。もうちょっというと、それにつながる出来事や設定の巧妙さ。


こう書くと、計算高さとかそういう印象に見えてしまうのだけど、そうではない。ここまで徹底的に考えつくして、おそらく「これでもか」というくらいアイディアのひねり出しと徹底した検証をしまくった成果なんだろうと。それを計算というのかもしれないのだけど、僕が感じているのは「計算高さ」ではなくて「そこまでして面白いものをつくろう」という意志。



で、好みに感じる要素を思い浮かべてみると・・・

 ・それぞれ別の固体としてぶつかりあっている状態から、「ふっ」とちょっと溶け合って混ざり合う瞬間
 ・心地よくつながりが深まっていく中で、それをいっぺんに覆してしまう出来事(伏線)
 ・後悔を乗り越えて、振り絞って壁を乗り越えようとする行動
 ・ハッピーエンド

といったあたりでしょうか。
※別の機会にもっときっちりと整理する予定


今回の作品も、このあたりが観られたので、楽しめたのではないかと。

以下、ちょっとネタばれします。





印象に残ったシーンを少し振り返ると、ふたつのシーンが思い浮かんだ。


ひとつは、ジャックが結婚(とそれにまつわる話)を内緒にして欲しいとお願いする場面。帰宅したら両親と楽しんでいる様子をみて、別の部屋に連れて行き、二人で話すところ。


それまでの野心や欲望、幼さばかりだったキャラクターと一変して、とてもシリアスな、かつ真剣な表情に変わる。言葉も丁寧に、まっすぐな視線を向けてお願いする姿は、このキャラクターへの共感を一気に高めていたと思う。


実際、ああいう風に話を切り出されたら、特に深いことを聞くことなく受け入れようと思えると感じた。人間、なかなかキャラクターと合わないことをするのは勇気が要りますが、ここぞというときにそういう一面を出してでも素直に頭を下げることが出来る人は、とても素晴らしい素養を持っていると思う。
これは、ちょっと見習いたい。



もうひとつは、(キャメロンディアス演じる)ジョーイが上司に保養所に「夫を連れて来い」と呼ばれて参加していたときの姿。ジャックが想像以上に柔軟に対応していたことに、素直に感謝していたところが、これまたよかった。


それまでは、普段のすぐにケンカしそうな(トムとジェリー的な)感じや、直前まで「来てくれないんじゃないか」という不安そうな表情。そこに、こうした姿が観られたことで、これまた一気に人間的な深みというか、魅力が「ぐっ」と増していた。


さらに、そのあとに続くシーンでも、この雰囲気が続いていて、「二人のお互いに対する印象が変わってとまどいつつも、惹かれ合っていく様子」が見ていて心地よかった。



信頼を感じた瞬間、バリアが薄れる。バリアが薄れた相手には、親近感を感じる。そこに、それまでに潜んでいた感情が上乗せされて、それまでとは違う関係性がつくられていく。
こういうのは、素敵なつながりだな、と思う。




僕自身の感想としては、全般的に、テンポが速くてドタバタ劇な雰囲気がある(特に前半)ので、ちょっともったいなかったなぁと思ったところもあった。とはいえ、こうしたところがあったことで、後半のシーンでの関係性の切り替え(描き方の切り替え)が効いてくるのもあったのかもしれない。あと、ドタバタのほうが好きな人もいるでしょう。




身近に「好きでない人・苦手な人」がいる方は、観てみると何かしら得られるものがありそうな気がします。それは、恋愛に限らず(というか、映画の題材として恋愛がみえているのであって、もうちょっと広い人間関係を対象としていると思われる)。


あ、あとキャメロン・ディアスが好きな人は、それだけでも観る価値があるかも(^_^