大秒殺in日比谷野外大音楽堂

【総合MC】COWCOW
【プレイヤー】COWCOW 多田/世界のナベアツ/ハローバイバイ 金成/ニブンノゴ! 大川/カリカ 家城/Bコース ハブ/佐久間一行/あべこうじ/ガリットチュウ 熊谷/ポテト少年団 中谷/グランジ 佐藤/ピース 又吉/ケンドーコバヤシ/小藪千豊/宇都宮まき/野性爆弾 川島/土肥ポン太/ザ・プラン9 お〜い!久馬/ザ・プラン9 ヤナギブソン/ランディーズ 中川/サバンナ 八木/とろサーモン 久保田/ジャンクション 下林/モンスターエンジン 西森/天竺鼠 川原/村越周司/東京ダイナマイト/猫ひろし/村上ショージ

【追加プレイヤー】POISON GIRL BAND 阿部/ハイキングウォーキング Q太郎/ハイキングウォーキング 松田/功力富士彦/ニブンノゴ! 宮地/コンマ二センチ 竹永/レイザーラモンRG/ガリガリガリクソン/さかなDVD 中西/くまだまさし/椿鬼奴/5GAP 久保田/Bコース ナベ/Bコース タケト/LLR 福田/LLR 伊藤/アホマイルド 坂本/アホマイルド 高橋/うどん 瀬山/うどん 滝口/エリートヤンキー 橘/エリートヤンキー 西島/えんにち アイパー滝沢/えんにち 望月/オオカミ少年 片岡/オオカミ少年 浜口/カナリア ボン/カナリア 安達/ガリットチュウ 福島/キャベツ確認中 しまぞう/キャベツ確認中 笹森/げんきーず 斉藤/ザ・パンチ 浜崎/コンマ二センチ 堀内/チーモンチョウチュウ 菊地/チーモンチョウチュウ 白井/デッカチャン/トレンディエンジェル 斉藤/トレンディエンジェル 須藤/ノンスモーキン 菊地/ノンスモーキン 中尾/若月 徹/若月 亮/フルーツポンチ 亘/フルーツポンチ 村上/ポテト少年団 内藤/ミルククラウン ジェントル/ミルククラウン 竹内/天狗 横山/天狗 川田/大西ライオン/マキシマムパーパーサム 山本/マキシマムパーパーサム 長澤/グランジ 五明/グランジ 遠山/来八 田中/ニューロマンス 堀部

【天の声】カリカ 林/南海キャンディーズ 山里
【審査委員】間寛平(審査委員長)/他



いってきました、大秒殺。ギャグの祭典。
ギャグはおそらく400個くらい浴びてきたと思う。こんな機会、そうそうあるもんじゃない。

なにせ、総勢100名のギャガーが登場して、ひたすら入れ替わり立ち代りでギャグを披露していく、という企画。若手としてメディアに登場している人々から、ギャガーとして認知されている人たちまで、かなり濃い内容だった。


1日に400個もきいていると、なんだかんだみえてくるものがある。もともとギャグは目にしているほうだとは思うのだけど、こうやって浴びまくってくると、あらためて認識や確信を深めたり、新たに気づいたことがあったりする。


■ギャグの質とはどういうものか?
ギャグの質を左右する要素は何だろうか。もともと頭にあったものと、今回あらためて見たたくさんのギャグの優劣(を自分が感じたもの)を比較して考えてみると・・・。

・不自然なくらい飛ぶのだけど絶妙につながっている発想
・精神的な不安定さを感じさせるくらいのテンション振れ幅
・世界観に溶け込んでいると思わせる演技力

この3つがしっかり揃っているものは、たぶん十分に面白い。たとえば、ナベアツの「1,2,3!」なんかは、これがかなり高いレベルで完璧に揃っている。

とはいえ、これがすべて揃うことは、たぶん相当難しい。特に、発想に関しては、たどり着けるかどうかは、運の要素も関わってくるんじゃないかとさえ思う。

このあたり、とても興味深かったのは、若手とギャガーとして認知のある芸人たちとの差が明確にでていること。若手60人が入れ替わり立ち代りギャグを披露していくコーナーがあったのだけど、かなりはっきりと玉石混交であることがわかる(もちろん、玉は少ない)。
しかし、ギャガーたちになると、面白さの比率がものすごい上がる。若手だと8割以上は面白いまでいかないのに、ギャガーたちだと半分以上は面白い。



■「面白い」にまで至らないたくさんのギャグ
実際、400個くらい見ていて、「これは(一定基準を超えて)面白いな」と思ったのは、だいたい10%〜20%くらい。そのうち、「1,2,3!」に匹敵するものは、正直なところ無い。なにかしら、そこまで達していない要素がある。

ギャグの面白さについては、先に挙げた3つの要素の「度合い」が大きく影響していると思う。
まず、どれかひとつが欠けていると基準値は超えないと思う。「面白い」と言えないときは、何かしら欠けていることが多い。多いのは、どれかひとつは及第レベルなのだけど、他が足りない、というもの。

いちばん多くみられたのは「発想」が飛びきっていないもの。どうも「浅い」もので終わってしまっている感じがするのだ。たとえでいうと、武田鉄也のものまねをするときに「人という字はぁ〜」というレベルで止まっている。これを、ものまねタレントのホリのように「金八がいわないこと」みたいな発想の味付けまでもっていけるかどうか。

あるいは、発想が悪くない場合、テンションの制御や演技がうまくないケースがあった。正直、これはもったいない。テンションと演技は、発想と比べると努力でカバーできる度合いが大きい。あともう何手間かかけることで、面白いといえるところまでいけるのに、と思うことも何度かあった。



■これがギャガー
印象に残った芸人たちをちらっと紹介しておきます。

まずは、The ギャガー
 ・FUJIWARA 原西、サバンナ 八木、COWCOW 多田
この人たちは面白かったのだけど、今回の企画では輝ききらなかった。残念ながら。
理由はひとつで、「これまでに披露したことのあるギャグをやっていた」から。どれもレベルは高いのだけど、インパクトは弱まる。かつ、他の芸人たちが下ろしたてのギャグだった(少なくともあまり広まっていない)ものだったので、相対的に薄まった感じがする。

あまりギャガーのイメージはないけど良かった人々もいる。
 ・ナベアツ、ケンコバ
ナベアツについては、ジャリズムのライブでギャグをやりまくっているので、僕個人的にはあまり違和感はないのだけど。世間的にはちょっと印象がちがうんじゃないかと。
ケンコバについては、ちょっと意外だった。本人も「ギャグは初」みたいなことをいっていたようなので、そんなにやってないのだとは思われる。でも、ポテンシャルの高さはさすが。


そして、若手でとても印象に残った人々。
 ・ピース 又吉、Bコース 羽生、カナリア 安達、椿鬼奴
いずれもかなり秀逸なギャグを見せてくれた。
ピース又吉は、ギャグの印象はほとんどなかったけど、かなり面白かった。ちょっと間違うとあるあるに落ち着いてしまうところを、ひねりによって世界観のレベルを上げて、見事にギャグにしていたと思う。
Bコース羽生は、もともとギャグをやっていた記憶があった。しかし、今回は、いままでの印象を払拭するくらい出来がよかったと思った。今回のレベルであれば、十分にギャガーとしてベテラン勢とも戦える。
カナリア安達は、飄々とした感じで、テンションがあまり高くないにもかかわらず、十分に面白いギャグを見せてくれた。彼の優れていたのは、視点。「そうくるか!」とちょっと唸ってしまうような面白さのあるギャグは、見事だった。
鬼奴は、イタコのようにキャラクターに乗り移るかのような入り込み方が面白さの根源にあると思う。発想も世界観も、本人のビジュアルとキャラ設定とハスキーボイスを見事にマッチさせている。

ま、そんな感じでしょうか。ほかにも面白かった人はいたのだけど、正直書ききれません・・・(^_^;



■ギャグの定義が難しくなっている
ここまで「ギャグ」ということで書いてきた。しかし、あらためて「ギャグって何だ?」と考えると、かなりわかりにくくなっている。

今回のイベントでもそうなのだけど、「ものまね」だったり「コント」だったり、スタイルやネタにかける時間が「ギャグ」と呼ぶにはちょっと違和感があるものも見られた。

というか、そもそもこのあたりの線引きがよくわからなくなっているのが実状。昔はギャグというと「ガチョーン」やら「だっふんだ!」やら、なんか面白い一言、みたいな感じのくくりがあった。しかし、ギャグの解釈がすごく広がってきていて、いっぽうで他の分野の範囲も広がってきているので、重複する領域がすごく広くなっている。

ということで、「ギャグ」と呼ぶものの対象がすごく増えている。今回の企画のように「ギャグというくくりで戦う」ということも難しくなっていきそうな気がする。別に問題ではないのだけど、こうやって異なる分野がお互いに侵食が続いていくと、発展の妨げになりそうな気がしないでもない。
ものすごいわかりやすい、古典的なイメージに近いような「ギャグ」も、新たに作られていって欲しいと思うので。




僕自身がギャグをつくることは、おそらくないと思う。ま、なにかの拍子にどうしてもやらなければならないようなことがあったときには、ここで整理したことを踏まえつつ、かつこれからさらに広め・深め・磨いた笑いにまつわる知識・経験・センスをもとに、なにかしらできるようになっておきたいと思ったり(^_^