築地魚河岸三代目

いい映画だった。いろんな意味で日本的で、なんかちょっとほっとするし、ほろっとする、やわらかな後味を感じられる作品だった。


印象に残ったこと。


ひとつは、職人文化の風景。何よりも人情とはこういうものという共感が伝わってくる。
すごく荒っぽい立ち振る舞いと言動が繰り返される。仕事師としての真剣な様子であったり、なにかと喧嘩っ早くつっかかっていく姿であったり、子供じみた反応であったり。


でも、そのいっぽうで、一度ふところに引き込んだ相手に対しては、すごく親身になって関わる。
昭和の下町の風景といわれると、こういうイメージなんじゃないかと思う。三丁目の夕日(僕は見ていないのでイメージだけで話してしまいますが)よりも、この作品にでてくる様子のほうが実際に近そうな気がする。率直にあたりちらす姿、なかなか素直になれない様子、でも実際はすごく優しく思いやる気持ちをもっている。


物語の前半では、これと相対する姿的に都会のビジネスの姿が(かなり極端に)描かれている。やりすぎな感じもあるけど、ある種以上の真実でもあると思う。この対比もあって、この物語のメイン舞台に対する憧れや共感が高まっていくのだった。


ただ、自分の職場がどちらかというと、正直どちらの要素もあるというのが本音。きっと、ほとんどの職場がそうだと思う。だからなんだというと、いろいろあるのですけど、この日記の中ではうまくかけそうにないので、またあらためて(^_^




もうひとつは、人生の選択。仕事をやめる・はじめる、結婚する・別れる、などなど、いろいろな岐路がある。大事なのは、いまこのとき何をやりたいか(やりたくないか)、これを自分の心から素直な気持ちで拾い上げることが出来るかどうか。


この映画の中では、主人公は商社マンという立場から、築地魚河岸という世界に乗り込もうとしていく。この状況の中で
 ・出会いは偶然(セレンディピティも含む)
 ・流れに乗って行動し、関わり、さらに行動する
 ・よさを知る
 ・選択肢をさぐり、決める
という流れで自分がありたい状態をみつけ、目指していく。


このとき、けっこう大事なのが、自分の武器があること。自分がいきたいところというのは、何かしら重なるところがあるものなんじゃないかと思う。で、武器があるとわかると、それをよりどころに切り込んでいける。自分自身が誇れるもの、まわりの誰かがほめてくれるものがあるのは、飛び込む勇気を奮い立たせるのに、とても大事だと思う。



あとは、癒しの期間が必要ということ。
あわただしい中をすごし続けていると、少なからず焦燥していく。楽しく幸せに走り続けられている間はそれでよいと思うのだけど、気がつくと走っている割に進んでいない状態になってしまう。
そんなとき、いったん休むことが大事なのだと。疲労し、傷ついた体を癒すこと。そういう自分をいたわること。治癒したところで、またがんばればいい、と。


ひたむきに頑張ることは大事。身を削いででもしゃにむにやらなければならないこともある。そうした行動で得られることもあるし、そうしなければ得られないこともある。
そうして頑張り続けて、でも何かうまくいかいことを察知したときには、一休みする。癒したところで、また頑張る。この繰り返しが、良い人生なんだと思う。



築地が舞台ということで、もっと市場的なストーリーになっているのかと思ったら、もっと「現代的な昭和的人情物語」だった。それは、観ていて不快になるような刺激のない、あたたかく落ち着いた気持ちを沸き起こすものだった。


観終わったときに、これは続きを観たいと思わせる終わりかただなぁ、と思った。なんとなく、寅さんとか裸の大将(映画ではないけど)とか、そういうにおいを感じたから。
と思っていたら、実際に続編があるらしい。
僕はきっと見ると思います(^_^