つぐない

本音のところは、あまりよくわからなかった。
何を伝えようとしているのか、いまいち伝わってこなかったという感覚が近い。映画の作りがおかしかったわけではない(むしろ、映画的、という雰囲気があるくらい)。でも、入っていけないのだった。


どうしてだろう。観ながら、ずっと頭に疑問が残った。


・説明が不足しすぎ
 冒頭で1935年のイギリスという舞台設定は語られるものの、それ以降、キャラクターやその関係、背景といったあたりがわかりにくい。いかにも説明的なものを排除していて、これが映画的な印象を与えているのだと思うのだけど、理解しづらさのほうにつながってしまった感がある。
 主人公の少女は、豊かな家庭に育ち、想像力に富み、といったことはわかる。でも、そのあとに登場してくる人物たちとの関係が難しい。家族といとこと友人と。人物が増えるたびに、おいてかれていき、入り込めなくなってしまった。


・混ぜ込みすぎ
 タイトルの「つぐない」を意識していると、ストーリー展開といまいちつながらない。「このことなのか?」と思っていると、話が進むうちに違うことがわかったり。
 また、とある裕福な家庭で起きたひとつの出来事なのに、戦争を舞台にした展開になっていったり、何をいいたいのかわからなくなっていった。
 あと、細かい演出が気になるところがあった。人物描写のためとは理解できるのだけど、必ずしも本論とは関係ないような感じもあったので。伏線になるのかなぁ、とも思ったのだけど、正直覚えなかったのでわからなかった。


・自分の調子がわるかった
 睡眠不足気味だったうえに頭痛もあり、映画に集中し切れなかった。ストーリー自体もとっつきにくいテーマ・内容なので、単純に理解が難しかった。調子がよかったら大丈夫だったかと言うと自信もないけど、今回ほどのわからなさはなかったのだと思う。そういう意味では、もったいなかった。


映画そのものが悪いわけではないのですが、期待していたものとは違う鑑賞感となりました。ただ、映画に詳しい方にとっては、良作なのかもしれません。映画や時代に関する知見で印象が変わるような気がします。


あと、これは映画をみるとわかったことがありました(ちょっとネタばれするので注意)。





この作品の違和感(わかりづらさや唐突感)は、「事実」という背景があることが影響しているということ。事実を書き留めたがゆえに、わかりにくさや唐突さがあっても、そのままにすることを選んだ。特に、この作品については、その「事実」へのこだわりが、製作の動機でもあるようなので。


ということで、この映画自体は、これはこれでOKなのだと思いました。そういう視点で見直したら、ずいぶんと違う感想を持つこともできると思います。
一方で、それを満足するにしても、また違ったストーリー・演出を活用することで、よりいっそうの意義・価値・面白さをだせたんじゃないかとも思います。