ぼくたちと駐在さんの700日戦争

期待を裏切る面白さだった。思ってた以上に、笑えて、感動することができた。


事前にネットの評判をみたときもけっこう評価が高くて
「なんでこの作品がこうなんだろう?」
と感じていた。
こういう印象だった理由はふたつあって
 ・タイトルがあざとい
 ・予告編が狙いすぎ(印象と内容に差が大きいパターン)
ということにあった。



ところが、実際にみてみたら、そうではなかったのだった。

何がよかったのか。


・笑える
 特に前半に集中しているのだけど、笑いを狙いに来ている。かなりたくさん。驚いたことに、これがあまり外してないのだった。正直、最初は、事前の印象もあったから、ちょっとのことでは「いやいや、まだまだ」とちょっと構えていたのだけど、連発するネタが悪くない上に、ちょいちょいヒットレベルもでてくる。いいかげん、笑うようになってしまった。そうなると、もう事前の印象なんて関係なく、自然に作品に入り込んでいった。


・共感できる
 このための仕掛けがけっこう盛り込まれていたと感じた。工夫を凝らしている、と。
その中でも特に思ったのは
「誰もがやりたいとおもったことがありそうなこと」
を盛り込んだところからきていると感じた。
かつて読んだ漫画や、観たドラマなどなど。それによって空想したこと。でも、やらなかったり、できなかったりしたこと。極端にいうと、憧れや夢といった言葉に近いようなこと。
 たくさんのいたずらや、事件(逮捕)になるようなこと。でも、それは悪意に満ちたものではなく、いまこの瞬間を楽しくするためのもの。あるいは、大切な仲間のためのこと。そうした、(ある種はた迷惑な)善意をきっかけとしていることが、観ていて通じてくるのだ。



この映画で行われていたいたずらは、特に今の社会でやると、きっと大問題になるものが多い。実際に迷惑をかけているから、これはしょうがない。
でも、この映画の舞台(1980年代)の地方のイメージでは、こうした出来事が、日常のひとつとして許容されている、そんな印象がある。どちらがいいのかは、なんともいえないと思います。でも、少なくとも、この映画で描かれている社会は、とても魅力的なものに思えた。迷惑をかけられたら本気で立ち向かい合い、でも本当にダメなことはしない。何も知らずにみたらダメにしか見えないことでも、本人にとっては(かつ、よくよくきいてみたらまわりにとっても)善意や正義を理解できるきっかけからの行動である。そして、それを真剣にやりあいつつ、認め合う。そして、楽しむ。そういう社会。
ここまでの状況は僕自身は経験したことがないので、よいことばかり想像しているのかもしれません。でも、これくらいの余裕のある社会をつくり、生活して生きたいと思うのも実感でした。



で、この作品には、ちょっときになるところがあった。それは、ふたつのシーン。
ひとつは、病院(入院)。もうひとつは、祭り。
どちらも、その他の出来に比べると、リアルさがだいぶ欠けていたのだった。特に前者については、あきらかに病院以外の施設を使っているのが、かなり簡単にわかる。それが笑いになることを狙っていたのかはわからないけど、僕はそう受け止められなかった。
きっと、どちらも予算の問題でこうなったのだとは思います。ただ、それは、おそらく正しくない判断だったと思う。どちらも重要なシーンとしてでてくる場面。ここは、手間も金もかけてほしかった。厳しい予算で映画をつくる現状が蔓延していることは多少ですが理解はあるつもりです。その上でも、あえてここは触れておきたかった。
予算権限を持つ方(ないし、予算獲得を担っている方)の活躍を期待します。


せっかく、これだけのよい作品をつくっているのだから、こういった妥協で崩してしまうのはもったいない。
ただ、そう思えるほどの良い作品だったことは、間違いないです。
面白かった!!!!