うた魂(たま)♪

この作品で印象に残ったものは二つ。
「魂をこめる」と「人を動かす」ということ。

ひとつの「魂をこめる」は、すごくわかりやすく描かれているメッセージ。この映画のテーマそのものでもあると思う。
魂をこめるというと、どうしても職人的なこだわりみたいな印象がある。それは「暑苦しさ」にとどまらず、「人生を賭けて」とか、そういう重々しさがついてまとう。だから、妙に壁を感じるし、そういう話をきくと引いてしまいがちになると思う。特に、若いと。
でも、この作品からは、そういうことではなくて「もっとわかりやすく、とっつきやすいものなのだ」ということが伝わってきた。


それは「全力を尽くす」こと。


全力を尽くすというのは、体力の限りとかそういう面もあると思う。でも、この映画で重きを置いているのは「素をさらけだす」ということ。かっこ悪い姿をさらけださざるを得ないほどにやりきることが、全力を尽くしたことであり、魂をこめたことなのだ、と。
映画では「フルチンになる」というキーワードで語られています(予告編にあるので書いてもOKでしょう(^_^;)


物語からは、必死で歌を歌う姿そのものや、歌いたいと思う気持ちを感じてすごしている姿から、「フルチンになる」様子が伝わってきた。
さらに、そうして取り組んだことには、自分自身がつまった成果が残るのだ、ということも伝わってきました。僕自身、これまでに取り組んできた仕事やプライベートでの活動、そういった実感を持てているだろうか。思い返す機会になりました。また、今後はそうした気持ちをもって物事を成し遂げていきたいとも。


と書くとちょっと大げさなのですけど、何かをやり遂げた後、必ず「自分の証をいくばくかでも詰め込んであること」を目指す、ということです。最初のうちはほんのわずかしか組み込めないこともあるかもしれないでしょう。でも、いつかは、何もかもそうなっているような、そういう仕事ができたらいいと思います。





で、もうひとつの「人を動かす」ということ。
人を動かすというと、最近は特にテクニカルな部分が出回っています。アサーティブとか。それ自体はすごく有効だし、テクニカルではあるけど、そもそもは「社会生活・共同生活上の配慮」から自然と生まれてきた仕組みだと思うし、価値のあるものだと思います。


でも、一方で、この映画から感じられるような「そもそも惹きつけられて動くもの」というところもあるのだと思った。それは、一生懸命にやっている姿。かつ、その人が「やりたいと思って」いて、「自分自身が本当に楽しんで」いること。さらに、「それに携わっているのであれば、自分の希望そのものとは少しばかり違う役回りをしていても、不平不満を言うことなく(それすら感じることなく)、取り組んでいる」姿。
また、「そういう風に取り組めていない仲間への接し方」にもあらわれるとも思った。甘えさせることも無く、見捨てることも無く。


「人を動かす」というのは、「一緒に何かをやりたい」と思い、動くこと。君はこうしたらいいよ、と促すことは、「人を動かす」ことの一側面でしかない。ここを履き違えないように、心に刻んだ。




基本的には、合唱を舞台とした青春映画ですが。でも、分野に限らず「打ち込める何かを探している人」「打ち込んでいるけどなんとなく迷っている人」にとって、何かしら得られるものがある映画だと思います。



とはいえ。ちょっと惜しいと思ったこともある。
映画としてみると、ちょっと軽い感じがした。もっと暑苦しさがあってもいいし、もっといろんなぶつかりがあっていいとも思った。というか、それは予告編で観た印象と比べたからこそのハードルなので、映画全般に期待しているわけではない。予告編でだしてきたのだから、それに応えて欲しかったと思ったのだった。
※もうちょっと正確に言うと、明らかに予告編の作り方の問題だと思う。この映画については問題になるような差ではなかったと思うけど、大作系に近いほど問題があると思う。
話はそれてしまいましたが。