歓喜の歌

立川志の輔の落語が原作という映画。


【内容】
とあるホールの職員が、12月31日に2つの「ママさんコーラス」の予約をダブルブッキングしてしまう。これをどうにかしようと、各登場人物がそれぞれの事情と利害を含めながら、交渉したり、逃避したり、同情したり、協力したりしあいながら当日を乗り切っていく。


【感想】
面白かったです。
ストーリーは伏線をいろいろと張りながら進める構成となっていて、しかもハッピーエンドになって終わることもあり、僕の好みです。ただ、伏線のなかには「新工場のご都合のためのもの」もあったのが気になりました・・・(^_^;


この映画のストーリーに密接に関わるのが「説得」。はじまりから終わりまで、ずーっとこれに関わるエピソードが折り重なっていく。


たとえば、きっかけである「ダブルブッキング」なんて、これはもう説得するしか対応しようが無い。なにせ、完全にホール側の手配ミスだから。最初にブッキングしたコーラス側にとっては、発足してはじめて迎える記念すべきもの。対する後からブッキングしたほうは、20周年。どちらも気合も魂もこもっている。しかも、それぞれに人生上の事情を抱えていて、簡単に引き下がるわけにもいかない。しかも、本番まで残された時間は、あと1日。
こんな状況におかれたら、どうしたらいいか(物語で行われる説得は、説得力のあるものは少なかったのが惜しかった(^_^;)。この物語における回答は、アイディアをだすところ(3段階くらいのステップがある)と、実際に解決していくところと、どちらも「ご都合主義」で片付けられているところがあるので、現実的な対処ではないなぁ・・・。


僕だったらどうするか。それは・・・。考え中(^_^;
映画の解決策とある程度重複するとは思うのですが、映画では飛躍している部分をどう片付けるか、というところが難しそうです。


あと、印象に残ったシーンのなかからひとつ。
安田成美と小林薫が、ホールの客席で話をする場面がある。小林薫扮するホールの主任は、プライベートで大きな問題を抱えていて、そんな状況とダブルブッキングの対応に挟まれて「とてもしんどい。(安田成美の役に向けて)あなたは幸せそうでうらやましい」ということを伝える。このとき、安田成美からは「他人と比べてもしょうがない。自分にとっての幸せがある」といったようなことを返していた。


隣の芝生は青く見えるもので、厳しい渦中にいると特にそう思いやすい。環境について思うだけならまだしも、自分自身の才能や能力についても他人と比べてしまうようなこともある。意欲につながる捉え方であればいいけど、ただの嫉妬にしかならない、あるいは現実逃避にしかならないようなものであれば、やはり良くないと思う。
このあたりを乗り越えられていると、おおらかで過ごせる時間がより一層長く保てて、人生も楽しくなりそうな気がする。


なんてことを思ったのでした。



この物語、いろんな「説得」が求められるシーンが出てきます。良い回答は得られないかもしれませんが、いろんな回答はきいてみたいかも(^_^ (特に、ダブルブッキングをどう乗り越えるか、とか)。