私はこうして受付からCEOになった カーリー・フィオリーナ

こんなに折り目をつけた本は久しぶり(つけた意味が無いかもしれない・・・)。
そして、僕は、フィオリーナーになりました、

(1)内容
いわずと知れた、元HPのCEOによる書籍。
一気に有名人化した姿だけでなく、幼少の頃の育ち方から就職、仕事にまい進していくまでの姿も描かれている。


■人がビジネスで成長していくための過程が凝縮されている
 ・変化や多様性に対する受容性を育む環境で成長していった
 ・おっかなびっくりしながらも、小さな成功を繰り返し、自信をつけていく
 ・役割が一段変わる「チャレンジ」を乗り越える
 ・「チャレンジ→UP」の繰り返しで、一気にスケールを広げる

 一般社員にとっての仕事の存在・内容・感じ方、経営者が感じる仕事の存在・内容・感じ方。
 どちらの視点も書かれている。
 たとえば、最初の入社をしたときのエピソードでは、アポ取りの電話をする研修を受けていたときのこと、失敗への不安からテストにもかかわらず体がすくむような状況だったとか(インストラクターの支援のもと、なんとか合格し、自信を持てたらしい)。


■組織行動論の上質な「ケースかつテキスト」になる内容
 ・著者自身の経験による具体的なビジネスケース。
 ・仕事および人間関係にまつわる指針、考え方、技術が散りばめられている。
 特に「リーダーシップ」「モチベーション」「仕事に対する心構え」といったあたりの充実度はかなり。
 たとえば「リーダーシップの資質」。「人格・能力・協調性」の3つがあるという。率直で勇気があること。自分の強みを知り生かすことができ、弱みを知り他人に任せたり学習できること。支援のタイミングを適切に見極め、自らあるいは人脈を通じて手を差し伸べられること。とか。
 また、「評価は上司の好き嫌いに影響を受ける」とか、ずいぶんと実際上のぶっちゃけた部分も書かれていた。著者がそれをやっていたものでなくても、「そういうことが行われていることに驚いた」(し、意識したほうがいい)といったことまで書いてくれている。


■やわらかく激しく漂ってくる人間くささ
 ・はじめるときにはすごく不安を抱えているが、チャンレンジして突破して乗り越える
 ・自分を支えてくれた人々すべてに対する感謝の気持ちが伝わってくる。
 ・自分を貶めいれようとした人々へのネガティブな感情も表されている。
 一般的には、どちらか一方だけ書いてることが多い気がする(特に、ポジティブな感想だけに偏ったもの)。でも、それってうそ臭い。本書のように、両面から、しかも本人の率直な口調で書かれていると、人間味が感じられる。痛快であり、共感できるものになっていると思う。
 


 特に、不安を抱きながらすごしてきたことは意外だった。フィオリーナさんに対する僕のイメージは、「最強の女性CEOとして、演壇に立って咆哮している」ような姿だったから。でも、実は僕らと変わらない普通の感覚を経験し、普通の妻・母親としての感覚も持って、一般社員と同じ高さの目線でコミュニケーションがとれる人だとわかった。もちろん、それだけではなくて、CEOとしてあるべき高さでの言動もとれる、ということも。



(2)書評

とても素晴らしい本だと思います。
フィオリーナさんに興味がある方(?)は、ぜひ一読を。
組織行動の知識を整理しようと思う方も、参考になると思います。学問としての深さはないかもしれませんが、実践の場で重要となるポイントが、幅広く盛り込まれていると思います。
 
読んで気になったことは、ひとつだけ。
前半部ではマネージャとして確立していく以前の成長の過程、後半は優秀な経営者としての成長の過程。
それぞれじっくりと書いてあるのだが、間の部分がすごくあっさりしているのだ。だから、前半から後半に読み変わるときに、少し飛躍間を感じた(特に、旧態依然とした組織にいる人は、そう感じるのではないでしょうか)。
ただ、これは、実際にそうだったのだと思う。フィオリーナさんは、そこに該当するポジションを、本当にあっという間に駆け抜けていったんだ、と。書籍の分量は、そのスピード感も考慮して書いたのだと思う。

ということで、満足度の高い読了感となりました。



(3)キーワード
ありすぎるのでまとめにくいのだが。あえて書くとすると。
「変化を受け入れる」「誰かが可能性を認めてくれれば、自分もそれを伸ばそうとする」「怖がって入るのは自分だけではない」
「最後までやりぬく覚悟がないなら、人を脅してはいけない」「怒りは、コントロールできる限りは有効」「うまくいっているときは上司はいらない」「部下に変われとは命令できない。応えるかどうかを選ぶのは部下自身」「限界や不公平に目を向けないで、できることに目を向ければいい」「いったん決めたら、諦めてはいけない」「事実を見る。事実を話す。事実に基づいて行動する。本当のことを話すのが、相手に敬意を示すこと」「




※それにしても、こんなに書いていたら、書評を書くのが嫌になりそうなので、もう少しバイトサイズで書けるようにしないと・・・。


※40min