ストリートビュー

googleストリートビューが話題になっている。
僕もこのあいだつかってみて、びっくりした。「こんなもの作っちゃうんだ」と。UIだけをみると妙に簡単なようにも見えてしまうのだけど、この使い勝手までたどり着くようにインフラやらソフトウェアやらをこしらえるのはかなり大変なことだろうと思う。Youtubeで得たノウハウもばっちりつぎ込んでいそうな気もする。

ということで、プロダクトの面白さと言う意味では、本当にすごい。これと同じものを作れっていわれたら、たぶんたじろいでしまいそうな気がする・・・(^_^;



しかし。手放しでほめられるかというと、そうでもない。プライバシーの対応は、正直、あまり気分のよいものではないと感じた。確信犯的な「してやったり感」がある。


まず、プライバシーに関しては、問題があると思う。
公道からの撮影であればOKというのは、法的にはOKなのかもしれない。写真撮影したり、それを商用利用(雑誌の記事に写真として使われたり)は、問題が無かったような気がする(ある程度の線引きがあったと思うのだけど、忘れてしまった)。

でも、実際に映像をみてみると、「本当にそういってられるの?」と思うようなものがある。ニュースでも話題になっているように、車や人物は平気で移っている。モザイク処理しているといっても、正直、知り合いであれば判別できないことは無いと思う。

モザイクがかかっていない映像も着々と見つけられていて、笑えないケースもではじめている気がする。このサービスの担当者は、自分自身がそういう状態にさらされても問題ないと思っているのだろうか?(本人だけの問題では済まなくなることも含めて考えることが大事)


僕が住んでいる近所の映像をみたとき、あまりにもはっきりしていて驚いた。ちょっと精度があがってきたり情報量が追加されたら、エントランスの中や駐輪場の中くらいは見られるようになってしまうんじゃないかと思った。マンションの1階に部屋があって、しかもカーテンがちょっと開いていたりしたら、中の様子は見えてしまうと思う(僕の住むところはエントランスだけなので画像的には問題なかったけど)。


いちばん問題だと思ったのは、googleの対応。公式見解みたいなものをだしていたけど、「過剰なオプティミズムだなぁ〜」と思った。
「いってくれればいつでも直します。知らせてください」
というのは、ものすごく自己都合のいい謳い文句と感じるのだ。本音はそうじゃないだろう、と。
「通報がなかったら、そのままにしときます」
ということだろう、実際に問題があったとき、Googleは「僕らは負けないよ」という腹積もりがあるというニオイがしてくるのだ。

このあたりは、Youtube著作権の問題があったときの対応が、こういった印象に影響しているのだと思う。「投稿した人が責任を担うのですよ。僕らは問題のあるものは、通報を受けたら消しますよ。だから教えてね」という対応。Youtubeのときは、投稿者がGoogle当人ではないからまだ通用する部分もあったと思うけど、今回の動画製作者はGoogleなので、Youtubeのとき以上に問題に対する責任は重い。

※正直、そのうち、「ストリートビューの動画を好きにUPしていいサービスをつくりました」とかいってきそうな気もしている。で、そのまま責任を担う配分をユーザサイドに移行していくんじゃないかと。



ここまで書いたことは僕の考えすぎという面もあると思う。でも、そうはいっても、ここに書いたような意図がまったく無かったとはいえないだろうとも思っている。
そうした意図がなかったとしたら、
「我々はこれだけの調査をして、品質確保に努めています」
ということをいえるはず(というか、いうべき)。それをやらずに「通報があったら対応しますから」というのは、姿勢として好ましいものではない。自分の仕事相手でこんなことをいってくる人がいたら、大いに不信感をいだきながら対応することになるだろうと思う。

「タダのサービスを提供しているのだから、それでもいいじゃん」という声もきこえてきそうな気がするけど、Googleは広告収入がターゲットだろうから、集客要素になるサービスはすべて有料と扱うべき。無料利用者と被害者が必ず一致する(無料で利用した人でなければ、被害者になることは無い)というサービスでなかったら、タダのサービスという言い分は通用しない。なんの利益も受けていない人が、被害だけをこうむるのだから。

今回のGoogleのふるまいからは、こういった印象を受けたのだった。
Googleが提供するサービスは素晴らしいものが多いし、存在を否定する気はまったくない。でも、多くの場面で「我々は負けない」という算段が見え隠れする見解が多くて、いまいち信用し切れないところもある。
なんというか、「勝ち組感にあふれた言動」というか。「そんな心配していたら、発展しないよね」を合言葉に、本当は心配りすべきところでも目をつぶったりしてないかなぁ、と。

実際はきちんと問題に対処しているのだけど、心象がよくないのです。これは、僕がネガティブに捕らえすぎる傾向があって、そう感じているだけなのかもしれません。



ちなみに。これまた世間で広がりつつ「身元調査等での悪用」に関しては、ストリートビューの問題ではなく、利用する側の問題だと思う。
ストリートビューで現場確認したら話とちがうというのは、悪用ではなく正当な判断材料といっていいと思う。大事なのは、「ネットで得られる情報が真実というわけではない」という認識を持つこと。

これを誤用しないようにするには、「ろくに現場確認をすることなく、あってはならないようなレベル(犯罪者として特定してしまうとか)の判断をしない」のと「(ネット情報に不備があるのに)不遇を受けたとき、現地確認にて再確認させることができる」ことが必要だと思う。
これは、ストリートビューの問題ではなくて、それを利用する側・運用する側の問題。少なくとも当面の間は。

もちろん、Googleも関与する必要があると思う。そうした情報を「根拠」にすることがないように呼びかけ、「いざこざにあったら積極的に介入する」ことまで言明すること。それが、Googleの責務にあたると思う。それくらいの覚悟が無いのなら、実行してはだめだろう、これだけの社会的影響力のある会社になってしまったのだから。



ベンチャー精神と大企業の論理が当てはまる会社なので、それぞれを適切に適用することが、Googleが最大の価値を生み続けるための条件だと思う。自身にとって都合よく使うことがないよう、期待したい。