イチロー
年始にやっていたTV番組「プロフェッショナル」。
録画していたものをようやく見た。
■イチローのイメージ
イチローというと、思い浮かぶイメージは
・プロ野球選手としてのストイックで厳しい姿
・WBCでみられた野球に対する熱い思い
・ドキュメンタリーでみる冷静で鋭い思考、目標達成意欲の高さ
・バラエティ番組なんかでみられるハイテンション
といったものだった。
この番組内でも似たようなイメージは垣間見られた。
自宅での様子も流れていて、愛犬と家族に対する素の接し方はバラエティ番組での様子に近い(もうちょっと、素の雰囲気が感じられた)のも興味深かった。
■革新とルーティーン
イチローに限らず、プロフェッショナルな人の要素がこれなんじゃないかと思うのだけど、イチローの姿は特にわかりやすい。
毎年毎年、バッティングフォームを変化させる(昨年は、ホームベースからの立ち位置を離す、といったことをしていたらしい)。一方で、朝起きてから、食事をとり、球場に向かい、試合前の練習をする。このあたりは完全にルーティーン(時間もきっちり決まっているらしい)。
当たり前なことをいってしまうのかもしれませんが、「体調を保ったり、精神面を緩やかに自然に上下させる」とか、コンディションの維持(制御)につながるものはルーティーンにする。技術や知識のような、結果につながる「コア」な部分は、「変化」させて向上させていく。変化させてもがたつかないように基盤を支えるためにルーティーンを確保する、という感じなのでしょうか。
あと、ちょっと面白かったのは、意外と「げんかつぎ」もする、ということ。階段をどちらの足から昇るか、とか。
■プレッシャーへの向かい方
自分にとっても印象的だったのは(番組の売りっぽいところでもあったのだけど)「プレッシャー」に対する姿勢、考え方を話していた部分。
印象に残った言葉を切り取ると
・自分は重圧に弱い
・血の気が引いて、脈が変わり、気持ち悪くなる
・自分を守るためにとんがった
レベルが相当に違うとは思いつつも、この言葉だけをみると、自分(凡人)と同じような感覚があるのだな、と。
で、こうした状況に対して
・精神で乗り越えるには限界がある
・プレッシャーを乗り越えるには技術しかなかった
と思っていたらしい。これもなんとなくわかる。
これまた技術といっている部分のレベルが違いすぎて、比較しにくいところですが。ただ「今持っているものを完全に出し切る(結果をだす)」ということではなく、「出し切れない部分を補完するものを手に入れる(磨く)(ことで結果をだす)」ということなんじゃないかと思った。
僕の場合は、もうちょっと弱いので、「はぐらかす」ことや「回避する」ことにつながるような方法も考えたり実行したりしてしまいます。
■目標と達成
2007年は「プレッシャーに真正面から向き合い、取り組む」ことを目標としたらしい。2006年までは「プレッシャーを回避して、できるだけリラックスすることで結果を出す」という姿勢だったそうなのだけど、それを変えた、と。
「立ち向かってもやれる結果を出せる自信があった。技術の獲得によって」「であれば、プレッシャーをかけるべきだと思った」ということらしい。
曰く「達成の重みが違う」と。
最終的に、この目標は達成されたかというのは、きちんとした回答はなかったのだけど、「手に入れたものがあって、ようやくスタートに立てた」という感覚になったらしい。心の底から野球を楽しむための。
目標に関しては、2007年には首位打者争いがあった。イチロー自身が「今日、これだけ打てなければ、獲れない」と判断した試合があって、それを満たせなかったときの様子が映されていた。
このとき、イチローは(人前には見せないように向きを変えたり、グラブで覆ったりして隠していたが)涙を流していた。
仕事で、悔しくて涙を流せるだろうか。今回のイチローも、中田がW杯で引退したときも、彼らの職場であるフィールドで流していた。自分は職場で涙を流せるだろうか。
もう少し言うと、そもそも、それだけの目標をもってない。そのことに向き合わされた。
■最終的に目指しているもの
イチローに対し、司会の茂木健一郎が
「いろんな記録を達成していますが、これからは?」
みたいなことを質問した。それに対し
・達成感がない
・何を得たいのか見えない。
・でも、もがいて苦しんでいることで光が見えると信じている
・何にも無く過ごしていたら、一生光は見えない。
といったことを返した。
そして、もう一人の司会の住吉美樹が
「(イチローの能力があれば、他のことでも成功できたと思うが)なぜ野球だったのか?」
とたずねた。これに対し
「最初に見た(憧れた)のが野球だった」
と答えていた。
イチローは特別な才能を持っている。これは事実だと思う。少なくとも「こうすれば同じことができる」といえる人はいないと思う。
とはいえ、僕らにとっても参考になることや共感できるものもある。年初から気持ちが萎えることが多かったのだけど、いい感じの気分になれた。自分にとっての課題がたくさん積みあがっている今の状況を、この感覚で乗り切りたいところだ。
■余談
イチローが、昨年のシーズンで手に入れ(かけ)た感覚があったらしい。それがあれば、「これまでの技術は要らない」と言い切るもの。
それは何か。
「ストライクゾーン以外に手を出さない感覚」
「これができれば、自分がいちばんヒットを打てる(そのために必要なものは誰よりももっている)」
とのこと。
この感覚、普通の仕事でも同じなんだよなぁ〜、と思った。
ヒットにできない(しにくい)ものに手を出してしまう。で、それはある程度見込んで進められるように(口八丁手八丁含めて)対策をとっておく。でも、これは、あくまでもやむなしのもの。
ヒットにできるものだけを見抜く能力(感覚)と、ヒットにする能力(技術)をもっていれば、相当な仕事ができるだろうなぁ、と。
僕はまだまだどちらも足りない(特に前者)。頑張ろう。